かに座
その認識で合ってる?
開山者になろう!
2023年上半期までのかに座が、数年にわたる猶予期間がいよいよ終わり、どこか遊びや余裕のある“物見遊山”的な環境や人間関係から脱していくための「ギアチェンジ」の時期だったとすれば、2023年下半期のかに座は、さながら前人未踏の山に登拝(とうはい)して霊地としたり、寺院や修業の場を開いた「開山者」にならんとしていくような時期とも言えるかもしれません。
古来より、日本における山の意味付けには、いのちの源泉たる神霊が顕現する山もあれば、仏菩薩がおわす山、名も知れぬ神が鎮まる山など、じつに多種多様で、いずれにせよ開山者や修業者たちは霊峰=神仏との共感をつうじて、新たな生き方を発見したり、民衆を助けるための霊力を身体にとりこんだりしてきました。
そして、開山者は僧侶や行者に限らず、仏教の在家信者や草の根活動家、巫者、猟師、俗人などさまざまでしたが、彼らはいずれも、木を渡って岩をよじ登り、身の毛もよだつ絶壁を伝い、飢餓と戦い、辛苦を重ねてやっと頂上を極めたのでした。つまり、開山とは本人の強い覚悟と必然性、何年かかっても完遂するだけの実行力、周囲からの経済的支援、神仏の加護といった諸条件がそろって初めて可能になる一大プロジェクトだったわけです。
例えば、北アルプスの槍ヶ岳を開山した播隆上人の場合、40歳で登拝の志を周囲に告げてからその実現に成功したのは丸2年後でした。また、自身の登頂のみでは満足しなかった播隆上人は、多くの人が山頂まで登れるようにするため、難所に網や鉄鎖をかける計画を立てましたが、その実現にはさらに10年ほどの月日がかかっています。
その意味で、2023年下半期のかに座も、この半年間で何かを成し遂げていこうというより、自分なりの肝入りのプロジェクトや一大計画をまずは開始していくこと。そして何より、山開きにどんどん真剣になっていくことそれ自体がテーマとなっていくでしょう。
2023年下半期:かに座の各月の運勢
7月「黄金比を見つけていく」
7月1日にはかに座を運行中の「個人の意思」を司る太陽と、「増殖・拡張」の木星とが息を合わせて協力・協働しあっていきます(60度)。これは自分ひとりで気楽に何かするというより、さまざまな組織や場、相手とのコラボレーションが広がっていくような配置であり、それも思いがけないところだったり、異なる分野とのかけ算が組まれていきやすいでしょう。
そしてここで大事になってくるのが、利他主義と利己主義のバランスです。両者の最適な比率を(特に利他が過ぎないよう)調整していくことで、全体として循環していく愛が長続きしていけるようデザインを整えていくべし。
8月「やられっぱなしじゃいられない」
新月は、かに座の守護星である月と、「意志の活性化」の太陽が混ざりあって新しい変化を生み出す特別なタイミングですが、8月16日にしし座で起きる新月は、そこに「電気ショック」を伴う天王星が激烈に揺さぶりをかけていきます(90度)。
これはふと思い立って「独立開業」していく人に典型的な配置なのですが、今回は特に「土地の縁に呼ばれる」とか「文化や伝統を守るべく侵略支配に対抗する」といったニュアンスが入ってくるので、言うならば『平成狸合戦ぽんぽこ』の人間側を相手取ったタヌキの戦い(令和版)を今こそ開始するくらいのテンションで臨んでみると、この時期はちょうどいいかも知れません。
9月「究極の脱力をもとめて」
9月15日には、おとめ座で新月を迎えた直後に、かに座の守護星で「無意識の習性」を表す月が、「溶解・融解」の海王星へと全身全力で身を投じていきます(180度)。したがって、コスパやタイパといった生産性至上主義や実利主義が魂の奥底まで浸透して「労働者」になりきっている現代人にとって、この時期は何かけしからぬことをしているように感じてしまうかも知れません。というのも、海王星という星はしばしばこの世的な「~せねばならぬ」を破壊してしまい、結果的に「何もしない」快楽へと私たちを誘うからです。
ただし、それは単にダラけるというのとは違って、むしろ心から安心するのに不可欠な「大いなるものに自分をゆだねる」感覚を深めていくことがテーマになっていくはず。
10月「現代の駆け込み寺はどこにあるか?」
10月15日には日本からは見えないものの、金環日食が起こります。これはかに座にとって「安心と安全」を意味する4番目のてんびん座で起こっており、あなたが何らかの形で“場づくり”というテーマに真剣に取り組んでいかねばならないことを暗示しています。
例えば、Twitterのようなソーシャル・メディアは、私たちが自然に抱く他人への興味や、何らかのコミュニティに所属したいという欲求を釣り上げるための疑似ターゲットを内包するようなデザインになっているという意味で、もはや社会の中で疲弊していたり弱っている人たちの「駆け込み寺」にはなり得ません。その意味で、ここでは今この時代にどんな場が求められていて、自分ならどんな場を作っていきたいのかということが、少なからず問われていきそうです。
11月「村のご隠居として」
11月27日のふたご座満月では、かに座の守護星である月が、「自己実現」の太陽と「自己主張」の火星という“強い自分”のイメージを構成する2つの星へ全力で身を投じていきます(180度)。
特に今回太陽と火星はいて座の初期にありますから、イメージとしては本来の意味での「ご隠居」として村の未来を見据えていくような感じでしょうか。もともと、隠居とはまだ老人とは言えない頃に隠居して、第一線を退いて村全体のことを考える立場に立った人のことを言いました。文字が読めたので、村人として生きつつも外の世界からの刺激にもきわめて敏感であり、たえず個々の利害を超えて村全体をどう運営していくかを考えていたのだと。ここで言う「村」が何を指すのかは、人によって家庭や会社、地域、業界、日本社会などさまざまですが、そこを自分なりにどう設定するかが肝となっていくでしょう。
12月「福々しさが大事なの」
12月13日のいて座新月では、かに座の守護星で「アンテナ」の役割を果たす月が、「夢見」の海王星の強烈な影響を受けていきます(90度)。この配置は、精神世界や宗教、心霊的な分野などでは王道であり、人によっては神秘的なビジョンを体験することもありますが、大抵の場合、ボケ役の芸人さんのようになっていくことの方が多いかも知れません。
裸踊りで神々を大笑いさせたアメノウズメしかり、近世に流行した「おかめ」さんしかり、彼女たちは美人であるとか、仕事ができるといったことよりも、その人がいるだけでなんとなく周囲が笑いに満ち、幸福感に包まれるがゆえにありがたがられていました。そして、この時期のあなたもまた、そんな「福々しさ」を自然と発揮していけるかも知れません。
2023年下半期:かに座の「おすすめの文豪」
石牟礼道子
1927年に天草に生まれて水俣で育ち、主婦業のかたわら詩歌に親しんでいた石牟礼は、やがて当時「奇病」と呼ばれた水俣病の存在を知り、68年に水俣病患者を支援する市民会議を立ち上げ、69年には水俣病の最初期のルポルタージュの1つとなった『苦海浄土 わが水俣病』を発表します。
1950年代半ばから発症数が急増したこの病気は、大学の研究班による有機水銀が原因という報告がありつつも、国や県ぐるみの隠蔽と企業(チッソ)との癒着によって究明や対応が大幅に遅れて被害が拡大していきました。結果的に、国が正式に事実を認定したのは1968年。この『苦海浄土』は、まさにこの苦闘の10年間を描いた作品なのです。
年に一度か二度、台風でもやって来ぬかぎり、波立つこともない小さな入り江を囲んで、湯堂部落がある。
湯堂湾は、こそばゆいまぶたのようなさざ波の上に、小さな舟や鰯籠などを浮かべていた。子どもたちは真っ裸で、舟から舟へ飛び移ったり、海の中にとぼんと落ち込んでみたりして、遊ぶのだった。
この冒頭の印象的で美しい水俣の描写から、患者一人ひとりの証言、そして町を牛耳る企業との交渉や裁判の記録という一連の流れが、まるで変奏曲のように繰り返されていきます。中でも特に生々しく記憶に残るのは、1959年の暮れにチッソ側が患者互助会と、「過去の水俣工場の排水が水俣病に関係があったことがわかってもいっさいの追加補償要求はしない」という契約を交わしたあとの次のような一節です。
おとなのいのち十万円
こどものいのち三万円
死者のいのちは三十万
と、わたくしはそれから念仏にかえてとなえつづける。
のちに、このあまりに理不尽な取り決めは「公序良俗に反する」との判決が下りて無効となってはいますが、これこそ石牟礼を10年間の苦闘とその泥沼の様相を作品化した一大叙事詩のようなこの作品執筆の原動力だったのではないでしょうか。自分なりの「一大プロジェクト」の着手へと動いていく今期のかに座もまた、かくのごとく執深くありたし。
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