さそり座
身近な危険の認識と対策
うんと安っぽい人間になっていく
2023年上半期までのさそり座が、2011年半ばからの約12年間を過ごしてきた古いサイクルの中で蓄えたものをいったん整理し、新しい人生サイクルへ入っていくための「禊ぎ」をしていく時期だったとすれば、2023年下半期のさそり座は、身も心も軽くしていくべく、生きた交流を通じて、思いきった「自己開示」をはかっていく時期となっていきそうです。
さそり座の人たちというのは、何かと自分の中に思いや感情をため込みがちな傾向にありますが、良くも悪くもこの時期は放流中のダムのようにみずからの思いが溢れて、周囲に伝わっていきやすいはず。
ここで思い出されるのは、ひと昔前の雑誌の人生相談コーナーでのやり取り。「近頃何故か自分が安っぽい人間に思えて、毎日がイヤで仕方ありません」ということに悩み、「本物になるには大学に入り教養を身につけ、社会に出て、人間を知らねばだめでしょうか」と投書してきた無職の18歳青年に対し、回答側である作家の深沢七郎は「人間に本物なんかありません。みんなニセモノで」あり、本物になるためには云々なんていうのは、「アキレタ考え」であると切り捨てた上で、次のように助言するのです。
安っぽい人間ならこんな有難いことはありません。安っぽいからあなたは負担の軽いその日その日を送っていられるのです。安っぽい人間になりたくてたまらないのに、人間は錯覚で偉くなりたがるのです。心配なく現在のままでのんびりとしていて下さい。いちばんおすすめすることは行商などやって放浪すること、お勤めなどしないこと、食べるぶんだけ働いていればのんびりといられます。
深沢はここで、頭を使ってやたらとモノを考えることを否定し、さびしさを埋めるために群れることを否定し、動物のように欲望に従い、植物のように何も考えず、ひたすら「安っぽい人間」になることを推奨している訳です。
ここでいう「安っぽい」とは、考えすぎの美学で暗い自意識を膨らませる代わりに、深沢自身もまた実践してきた「やりたいようにやれ。てめぇ一人で」という生き様を貫いていけるだけの“パンクさ”の裏返しでもあったはず。そうして、「てめぇ一人」でやる人間であるほど、周囲の人間というのは手を貸してくれるものなのではないでしょうか。今期のさそり座もまた、それくらいのつもりでのんびり過ごしてみるべし。
2023年下半期:さそり座の各月の運勢
7月「門前の小僧」
7月9日頃に、さそり座の守護星で「死と再生」を司る冥王星と、もう一つの守護星で「挑戦する力」を司る火星とが調教や改造を強烈にうながす配置をとっていきます(150度)。これは喩えるなら、海を越えて亡命を試みる難民のようなイメージに近いかもしれません。いったん踏み出してしまえばもう後戻りできないような一歩を、自分を叱咤してでも踏み出していくような感覚です。
そのためこの時期は、今までならちょっと自分には難しいかなと感じるようなハードルをあえて課してみたり、多少の無茶や不合理が伴うような世界に首を突っ込んでいくにはもってこいのタイミングとなっていくでしょう。
8月「サーキット場のカーレーサー」
8月24~5日に前後して、「興奮と燃焼」を象徴する火星と「底抜け」の冥王星とが、今度は自然と共振して増幅しあっていきます(120度)。さながら、サーキットで速度メーターを振り切るまでスピードを出すカーレーサーのごとく、ここでは日頃は気にしている制限や抑圧が取っ払われ、自分の限界を試すかのように何かと「やり過ぎ」ていきやすいでしょう。
逆に言えば、いつもの日常で通常運転しているだけだと暴発しかねないので、この配置をどこかで解消する必要が出てくるのだとも言えます。ちょうど週末に入っていくタイミングですので、思いきり羽目を外すつもりで予定を立ててみるといいかも知れません。
9月「死の淵からの回復をはかる」
9月21日頃には、さそり座の守護星で「底力」を司る冥王星と、「創造性」を促す太陽とが自然と共振して増幅しあっていきます(120度)。この配置は、言うならば一度枯れかけていた植物に新しい芽や葉っぱが生えてくるかのように、一度ダメになりかけたものを取り戻す「修復」や「回復」を暗示します。
やり直しや再浮上のチャンスでもありますから、もしまだ心残りなことあるのなら、この時期に何かしら動いてみると結果につながっていきやすいでしょう。
10月「戦時にも密かな楽しみを」
10月6日に前後して、さそり座の守護星で「変容」を司る冥王星が、「戦い」の星である火星に揺さぶりをかけられ(90度)、同時に「快楽」を象徴する金星を自身にねじ込んでいこうとするでしょう(150度)。これは言わば戦時体制に入って最前線に配置された軍人が、それでも正気を保とうとするかのごとく食事や読書などにひそかな楽しみを見出そうとしていくようなイメージを浮かべると分かりやすいかも知れません。
より現実的には、異様なハードワークにいそしみつつ、すき間時間で趣味に興じてリフレッシュしていくといったところでしょうか。特に、後者の要素をいかに創意工夫していけるかが鍵となっていきそうです。
11月「逆張りへと突き進め!」
11月12日に前後して、さそり座の守護星で「対外的な自己主張」の星である火星が、「自由と解放」の天王星をターゲットにして働きかけていきます(180度)。これは、常識やルールをあえて破っていこうとする人に典型的な配置で、「みんながYESと言っているならNOだ」といった逆張り的な言動に自然と突き動かされていきやすいでしょう。
ただ、それは単なる一時の気の迷いや脳の誤作動というより、無意識のうちにため込んでいた不満や鬱屈した思いを爆発させていくのにもってこいのタイミングなのだと言えます。とかく社会の規制や慣習から外れていきやすい傾向がありますが、言動にはキレや冴えが出てくるはず。
12月「場違い感と異邦人モード」
12月20~21日にかけて、さそり座を運行中で「人付き合い」を司る金星が、「切り離し」を促す天王星へ思いきり飛び込んでいこうとしていきます(180度)。天王星は、近くをしりぞけ、遠くを呼び込もうとしていく星なので、この時期はこれまでなんとなく一緒にいた人間と距離を置いたり、思い切って関係を切断していく代わりに、あまり親近感を覚えたことのなかった人間と唐突に接近したり、縁ができていくといったことが起きやすいでしょう。
さながら、いつもなら山手線の内側を出ることのなかった人が、思いつきでローカル線に乗り換えて見慣れない郊外の駅で足をのばし、そこに知り合いができるといったイメージです。あえて場違いな場所で異邦人モードを楽しんでみるべし。
2023年下半期:さそり座の「おすすめの文豪」
深沢七郎
深沢はギタリストとして活動していた42歳のときに、民間伝承の姥捨て伝説を題材に楽屋で書き上げたというデビュー作『楢山節考』で、当時の有力作家や辛口批評家たちに衝撃を与えたことでつとに有名ですが、その本質は日本の大衆文化の規格や制度的な枠に呑み込まれることなく、「日本国」というリアリティを平然と越えていった点にありました。
そうした作品を書きえた要因のひとつは、おそらく深沢が“お上”を信じるという体質をまったく持ち合わせていなかったからでしょう。深沢は商人の家に生まれたこともあって、中学を卒業するとデッチ奉公に出されたそうですが、いとこの影響もあって、何回も奉公先をくらがえしたのだそうです。その上で、彼のエッセイ「生態を変える記」(ちくま文庫『深沢七郎コレクション 転』収録)では次のように述べられています。
デッチ奉公をした者にはよく判ることだが、その国に住んでいることは「こうしてはいけない、ゼニの稼ぎは出せ、きめられたとおりにことをしろ」と主人に言われるのと同じだと思っている。ゼニを出せということは税金のことで、これも稼ぎのうわ前をはねられることなのである。言うことをきけというのはデモで反対したことも従わなければならないことで、こうしてはいけないというのは官僚や政治家の都合のいいようにきめられることである。
つまり、旦那が奉公人に勝手な我儘を言っているのと同じである。それだから、その国に住んでいることはその国に奉公しているデッチと同じだ、と私は思っているのである。
奉公人はその家が厭になれば奉公先をかえる。つまり、くらがえするのである。
ほんとに簡単なこの法則をなぜみんな実行しようとしないのだろうか。
もし深沢が生きていたら、今の日本政府や日本人について何と言及したでしょうか。おそらく、何でもないような顔をして、さっとどこか田舎へ引っ越して畑仕事でも始めたかもしれません。そして、私たちに向かってこう言うのです。
「バカだな、おなじところにばかりいるなんて」
古いサイクルから新しいサイクルへの過渡期の真っ盛りに入ったさそり座もまた、そんな深沢の作品をパラパラとめくりつつ、お上の滑稽な妄想や我儘に付き合う代わりに、ひょいと自分なりの「くらがえ」にいそしんでみるといいでしょう。
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