
しし座
ハッとして!Good

ささやかなものに吞み込まれる
今週のしし座は、『世の中は三日見ぬ間に桜かな』(大島蓼太)という句のごとし。あるいは、予期しなかった世の流れに呑まれ、あらぬ方へと押し流されていくような星回り。
作者は江戸時代の俳人で、門人の数が三千にものぼる一大勢力を築いた人ですが、たえず芭蕉への回帰を唱え、自身もまたある種のパンク精神を体現した人物でもありました。
ここで言う「世の中」とは、SNS上でバズっている話題だとか、今度は誰が炎上したり叩かれたりしているかといった社会的環境のことごととは無縁な、ささやかで地味な自然的環境のことでしょう。
私たちはともすると、前者のことで頭がいっぱいになってしまいがちですし、それが人生のすべてであるかのように錯覚して苦しみますが、それをあざ笑い突き放すかのように、時に後者は私たちをその実存ごと呑み込んでは、現実をひっくり返してしまいます。
ちょうどこのくらいの時期の桜も、やっと咲き始めたかと思ったら、あっという間に満開になって、あっさり散ってしまいます。その鮮やかさと、取り返しのつかさなさに、人はまんまとしてやられ、あるいは自分が失ってしまったものの大きさを思うのです。
ただし、これがもし「三日見ぬ間に」が「の」であれば、「世の中は三日見ぬ間の桜かな」となって、あっという間に散ってしまうのだぞ、といかにもことわざや警句めいて説教臭くなっていたところでした。「に」であるからこそ、桜の咲きぶりにハッとするだけの感受性の震えが表われているように感じられます。
4月5日にしし座から数えて「意識化できない領域」を意味する12番目のかに座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、めんこ遊びのように自分のなかで「図と地」がひっくり返されていくような動きが出てくるはず。
色々こねくり回す時間=生みの母
80年代に映画版『ナウシカ』がその後のエコロジー・ムーブメントの旗手となっていったことはよく知られています。ただし、『ナウシカ』の世界は最初から完成された思想として宮崎駿の中で構想されていたのではなく、それらに先行して、まず腐海の森の描いた1枚の絵として突如現れたことはあまり知られていません。
『ナウシカ』は、コミックの連載をすると言ってしまった後に形になっていったんです。その頃はまだ、荒涼とした砂漠の中にある小国みたいなイメージしかもっていなかったんですが、色々こねくり回したり、いじくり回したりしているうちに突然、森が出てきちゃうんですね。突然です、本当に。初めは砂漠を描いていたのが、砂漠より森のほうが自分で気持ちがピッタリすることがわかったんです『風の谷のナウシカ―宮崎駿水彩画集』
実際、漫画版『ナウシカ』の第1巻をめくって最初に目に飛び込んでくるコマには、主人公と同質のタッチで描かれた鬱蒼と茂る腐海の菌類たちが描かれていました。
今週のしし座もまた、そんな風に色々こねくり回したり、いじくり回したりしているうちに突然出てきてしまうものをこそ大切にしていきたいところです。
しし座の今週のキーワード
三日見ぬ間に





