
おとめ座
落葉を踏む

「まぁいっか」
今週のおとめ座は、『落葉道二度聞き取れずもう聞かず』(藤井あかり)という句のごとし。あるいは、聞こえないはずの声を聞き、口をついて出がちな言葉を飲み込んでいくような星回り。
乾いた落葉の落ちている道をしゃくしゃくと音を立てて踏みしめながら、2人して歩いていたときの出来事を詠んだのでしょう。
相手が何か言ったのが聞き取れなくて、「え?」「何か言った?」と聞き返し、すこし間が空けてから相手が言い直した。ところが、その間にちょうど落葉を踏んでしまい、結局2度目も聞き取れなかった。けど、まぁいっかと。
それは何て言われたか検討もつかないけど、2度も言い直しを要求したらウザいし、嫌われるかもだからまぁいっか、ということではなくて、わざわざ聞かなくてもなんとなく分かるからまぁいっか、ということなのなのではないでしょうか。
落葉を踏んだらどんな音がするのか、たとえ直近の記憶がなくても僕らがなんとなく頭の中でその音を再生できるように、作中の「私」もまた相手がこのタイミングでどんな言葉を口をにするのかが、なんとなく聞こえてしまったのかもしれません。
これはタロット占いをしていて、シャッフルして並べたカードをめくる前に、なんとなく相手の置かれた状況だとか、伝えるべき言葉がわかってしまう時と似ているように思いますし、占い師などしていると、そういう瞬間というのは案外そう珍しくないのだということが分かってくるものです。
11月1日におとめ座から数えて「コミュニケーション」を意味する3番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、口にするべき言葉と飲み込むべき言葉の取捨選択ということが一つのテーマとなっていくでしょう。
「あ、そうだったのか」
ぼくたちはすこしも自分のもとにはいないで、つねに自分の向こう側に存在する。不安や欲望や希望がぼくたちを未来の方へと押しやり、ぼくたちから、現に(今この瞬間に)存在していることについての感覚や考慮を奪い去る(モンテーニュ『エセー』)
モンテーニュが指摘するこうした傾向は、現代においてますます強まっているように感じられますが、ここには奇妙な逆説があります。すなわち、未来時のある到達点にいたりたいなら、本来足もとの大地を一歩一歩踏みしめていかなければそれはありえないのに、私たちは道を歩まず、道を知らずに、あたかも「どこでもドア」を前にしているかのように、いきなり目的地へたどり着くことを期待しているのです。それは来たるべき未来への近道どころか、むしろ反未来主義的な態度とさえ言えます。
間近にありすぎるもの「今ここ」は、かえって朦朧としてリアリティを感じないものですが、しかし着実に来たるべき未来(目的地)へ至る道はそこにしかありませんし、それこそが「落葉道を歩む」ということでもあったのではないでしょうか。
その意味で、「ゆっくり行く者が、遠くへ行く」というイタリアのことわざは、今週のおとめ座にとってよき指針となっていくことでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
一歩一歩踏みしめながら歩くこと





