おとめ座
ズドン
「季語が動かない」ということ
今週のおとめ座は、『かくれんぼ入れてふくらむ春炬燵』(八染藍子)という句のごとし。あるいは、他者や対象へのピントを巧みに調整していこうとするような星回り。
家の中で子供たちがかくれんぼしている光景を写し取った一句。これがもし寒さが厳しく動きの少ない「冬」の炬燵だったらちょっと息が詰まってしまいそうですが、空気までも軽くなったように感じられてくる春ならば、中に隠れることもできるだろうという気がしてきます。
ちょっとふくらんでしまっている炬燵も、ひょっこりと野にあらわれ始めた緑や木々の芽を連想させて、いかにも春らしい感じがします。
つまり、掲句が見事におさまっている理由は、ひとえに「春炬燵」という季語の選択にあり、それによって生じるニュアンスの絶妙さが冬や夏、秋など他のどの季節に置き換えても成り立たない点にあるわけです。
こういう句を、よく俳句の世界では「季語が動かない」と表現しますが、その実現はたまたまの偶然などではなく、本人がいかに日頃から真摯に季語と向きあい、感度の良いアンテナを張り巡らせているかということにかかっているはず。
2月29日におとめ座から数えて「対象との関わり方」を意味する7番目のうお座で土星と太陽と水星の3つの惑星が重なっていく今週のあなたもまた、身近なパートナーであれ、大事な取引先であれ、他でもなく「これでなければ」という“動かなさ”を追求していくことがテーマとなっていくでしょう。
キャッチボールのしがいについて考える
大人の世界にあって、子供の世界にないものと言えば、結婚もその一つ。そして考えてみれば、恋愛は結婚に形を変えたとたんに消えてしまう一方で、友情というものはほとんど形が変わることがない代わりに、それを維持していくには純粋に「ボールを交換し続ける」以外に方法がありません。
そこでは、どちらか片方側のみに長くボールを温めて続けることは許されず、必ずボールを返していかなければならない。しかも、相手は必ずしも投げた時と同じ場所で待っている訳ではないですから(不在)、現在相手がいる地点に向けて、適切な力でもってボールを投げていかなければならない。
それに、相手やボールを見失わないようにと近い距離でやり取りしていれば、おのずと手応えも軽く、心許ないものになっていく。その点やはり、ある程度離れた距離でカーブを描いた球がズドンと手に響くからこそ、キャッチボールのしがいというものが出てくる訳です。
そう考えてみると、案外キャッチボールを続けていくのはかなり難しいことなのではないでしょうか。でも、それを試みてみること。それがおとめ座の今週です。
おとめ座の今週のキーワード
自然を相手にしたキャッチボールとしての俳句