おとめ座
根本としての食と性
贅沢の究極
今週のおとめ座は、修道院の献立表のごとし。あるいは、幸福の実感は口腹から、そして自然からやってくるということを実感していこうとするような星回り。
かつて中世スイスにあったベネディクト派の僧院長・エッケハルト四世(998頃~1060頃)が遺した『食卓譚』は、当時の修道院の完全な献立表を記録したものとして、食味史上でも注目すべき文献と言えます。
まず、塩を添えた多種多様のパンで胃をみたし、それから魚肉、鳥肉、家畜および猟獣の肉の少なくとも一皿(すべてソース、野菜、その他の添物なし)をとり、つづいてミルクを飲み、ここでまずチーズへと移った。次に、強烈な香料とソース、それに蜂蜜、扁平なパン菓子、卵だけからなる一皿が出され、さらに人びとは陽気に酢を飲んだが、これはおそらく次につづく皿―豆類、土地の果物と南方の果物、新鮮な根菜類のそれぞれ一品を取り合わせた皿にたいする食欲増進剤としてであろう。喉をうるおすには、まずさまざまなブドウ酒、次にビール、さいごに水をもってした
こうした記録を読むと、今日一般的な修道院の質素なイメージに反して、彼らが宮廷の貴族たちを含め同時代のどの階級の人びとよりも豪華な飲食の楽しみを漫喫していたことが分かります。
ベネディクト派と言えば、ヨーロッパ全土にカトリックを広めた僧派だった訳ですが、その実質的な原動力となったのはこうした生活の豊かさや喜びだったのかも知れません。その意味で、9月26日におとめ座から数えて「実質」を意味する2番目のてんびん座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、どうしたら自分を喜ばせられるのかを徹底して考え、実行していくべし。
初めに受け取めるべきもの
新宿からほど近い四谷3丁目は、異様なほど坂道の多い街で、その坂の途中や崖沿いはたくさんのお墓で覆い尽くされています。宗教学者の中沢新一も指摘しているように、墓地の周りには日本の街の常として必ず花町ができるそうで、当然そうした花町の周囲には小洒落た飲食店街ができていき、結果としてその一帯が繁華街となってきたという歴史があるのだそうです。
四谷3丁目あたりの崖には、既に古墳時代には横穴墳墓が作られていたそうですが、そうして死者の念が幾重に積み重ねられてきた場所に、食と性という人間の二大欲求を満たすための機能が町として築かれてきたという意味で、四谷3丁目のような町が、いかに野性味にあふれた場所かということが分かるでしょう。
先の修道院もそうであったように、人は土地が放射する力を受けて、それにふさわしい街を作るものなのかも知れません。今のおとめ座もまた、自分なりの「街」や経済圏を作っていく最中にあるかと思いますが、自分がいったいどんな土地や死者の念を受けとって生きているのかということについて、今週は改めて考えてみるといいでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
生と死をつなぐ「境界地帯」としておのれを展開していく