おとめ座
価値を転倒させていく
私は恐竜の末裔である
今週のおとめ座は、『蜥蜴の交尾ずるずると雄ひきずられ』(田川飛旅子)という句のごとし。あるいは、どこかで見失っていた「強さ/弱さ」へのまなざしを取り戻していくような星回り。
2匹の蜥蜴(とかげ)が交尾がしているのを見ていると、メスの蜥蜴にオスがずるずるとひきずられつつも、交尾が続いていたのだという精緻な観察を詠んだ一句。
それにしても、「ずるずると」などと言われると、ほんの些細で小さな出来事のはずの蜥蜴の交尾が、まるで街を廃墟に変えてしまうような巨大怪獣同士の命をかけた肉弾戦のように感じられてくるから不思議です。
ひるがえって、それは人間の女性の根源的なたくましさと、男性のひ弱さに重ねられているようにも感じます。作者は長年にわたり企業で勤務してきた男性ですが、だからこそ自身の経験も踏まえた上で、表面的な強さや勢いのよさなどには惑わされない、人間の奥深い機微に対する洞察を備えていたのかも知れません。
そもそも、強さや弱さというのはそんなに簡単にはかれるものではありませんが、現代社会ではどこか物理的強さや経済力といった分かりやすい基準だけでそれを決めつけてしまうような傾向があるように思います。
その意味で、8月12日におとめ座から数えて「ケア」を意味する6番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、一般的ないし現代的な基準とは異なる視点を通して、強さ弱さということにまつわる既存の議論を相対化していくべし。
「女に性転換させられた」シャーマンの話
北東シベリアの遊牧民族チュクチェ族では、シャーマンは神霊の象徴的な「妻」として女性の衣装をつけたり、男同士で公然と結婚したりするのだそうで、例えばロシアの人類学者ボゴラスは、「女に性転換させられた」とされる特別なシャーマンの存在について、次のように報告しています。
ある男は、子どもの頃から周期的に一定の病気を発病していたが、これを治療するため、お告げを得て女装した。神霊は、病人を癒すため、それを識別しやすくするために、女性の髪型を要求することがあるとも言われる。少し進んだ段階では、女装した男性は、職業的・仕事的にも全く女性化する。女性の仕事である針仕事や皮みがきをはじめ、筋肉もすっかり女性的な感じになる。この段階になると、男の性的興味をひくことを求めるようになる。(栗本慎一郎訳「同性愛の経済人類学」)
彼らは「柔弱な男」とか「女のような男」と呼ばれていたそうですが、ある意味で自分の属していた社会の共同利益のために、いかにしてエクスタシーを行使するべきかを段階的に知っていたのだと言えます。そしておそらく、いつの時代のどんな社会にも、こうしたトランスジェンダー的存在は社会の必要に応じて出現してきたのではないでしょうか。
今週のおとめ座もまた、一般的には不運や損失だと思われるような事態にこそ、隠れた利益や追求すべき貢献が隠れているのだということを改めて自分事として捉え直していきたいところです。
おとめ座の今週のキーワード
融通無碍に状況を楽しむ