おとめ座
バトンを繋いでいくこと
遠回りすることだけが効果をあげる
今週のおとめ座は、シモーヌ・ヴェイユの「注意と意志」の問題のごとし。あるいは、「ひとつの報いに縛られていない努力」ということをつかんでいこうとするような星回り。
彼女の断章集『重力と恩寵』(1947、田辺保訳)の「注意と意志」という章には、「求めている目的とは反対の結果を生むような努力がある」として、「いらいらのこうじた信心家、えせの禁欲、ある種の献身的行為など」といった具体例が付けられています。
これらは努力の目標であるものに、自分が従属し囚われてしまっている訳ですが、著者はさらに「首尾よく目的にたどりつけなくても、つねに有用な努力もある」として、「どうして、その見分けをしたものか」と自問した上で、こう答えてみせるのです。
おそらく、先の努力には、自分の内部の悲惨さを認めぬということが伴っているのだろう。あとの方の努力には、あるがままの自分の状態と、自分の愛するものとのあいだの隔たりにたえず注意を集中しているということが伴っているのだろう
彼女の言う<重力>は物理的な重力にも似た心の惰性的で功利的な働き(つまりまやかし)のことであり、それに対し<恩寵>とは心の単なる自然な働きを超えたものを指していて、「二つの力が宇宙を統御している、重力と光と」という言い方で<恩寵>は「光」とも言い換えられています。
つまり、分かりやすい報いをあまりに求めすぎているような努力は「よくない求め方」であり、報いを隠し持っているような努力だけが「有用な努力」なのだということ。
10日におとめ座から数えて「力の衰え」を意味する8番目のおひつじ座で火星が逆行に転じていく今週のあなたもまた、自分の追求している目的の前でいったん後退してみせることによって、何かしらを成し遂げていくことが課題となっていくでしょう。
託されたメッセージ
別の言い方をすれば、今週のおとめ座は「さりげなく託された大切なメッセージ」に気が付くか、それともスルーしてしまうか、その危うい境界線上に立っているのだとも言えます。
この場合の「メッセージ」というのは、過去に人から言われた言葉だったり、本で読んだ一節だったり、以前買っておいたモノだったり、形は人それぞれでしょう。大事な点は、それが一度あなたの中で忘れられていたものであること。
こう書くと、まるで「雲をつかむ」ような話に聞こえるかも知れませんが、もしあなたが、ここ最近「別段間違った選択はしていないと思うけれど、なんとなくまだ決定的なピースが埋まっていない」ような、何とも言えない心許なさを感じているなら、あなたがいつの間にか託さていた「メッセージ」や、それを渡してくれた相手のことを探してみてください。
うまくいけば、バトンをつなぐような感覚を通じて、ここのところ自分が下してきた判断やなんとなく取った選択に一本筋が通っていくはずです。
今週のキーワード
夾雑物をできるかぎり無くすこと