おとめ座
陰影礼賛
予感から確信へ
今週のおとめ座は、盲人が独りきりの時の世界のごとし。あるいは、視覚優位から聴覚優位への切り替えスイッチを押していくいくような星回り。
一般的に、失明すれば文字も読めなくなり、生活上の制限も増え、創作活動も難しくなると考えられがちですが、実際に過去の著名な詩人などを見ていくと、むしろ逆の例が多くあることに気づかされます。
例えば、イングランドの大詩人・ミルトンは、44歳で過労のために失明した後、50歳で代表作となった一大叙事詩『失楽園』の制作に着手して9年後に刊行しましたが、その他の詩人としての業績もほとんどすべてが失明後に物したものでした。
もちろん、ホメロスのような描写がきわめて視覚的な詩人というのも多い訳ですが(ただ彼はその伝説においてはつねに盲人であった)、一方で聴覚的で音楽的であることは詩の本分であり、ボルヘスによれば視覚的でない詩人は「知的な詩人」なのだと言います。
ミルトンの失明は自発的なものでした。彼には自分が大詩人になる予感があり、失明したことでそれが確信に変わったのです。ミルトンがソネットにおいて自分の盲目について語っている箇所では、「in this dark world and wide(この暗く広い世界に)」とありますが、今週のおとめ座もまた意図的にそうした自分なりの‟精神と時の部屋”へと籠っていこうとするようなところが出てくるでしょう。
魂の調律師
芸術はそれを体験した者を、人としてあるべき元型へと結びつけ、調律してくれますが、今週はそうした「調律」を自然と行っていこうとする機運が高まりやすいでしょう。
とはいえ、それは道端に咲いている花の気配を感じて立ち止まることや、何気なく口ずさんだ歌のリズムを頭ではなく舌や鼻で感じてみたりといったことでも構わないでしょう。
要は、心の琴線に触れてくるものをどれだけ切実に求め、美的な感受性を活性化していくことができるかどうかが大切なのです。
その意味で、常時情報と接続するのが当たり前になった今の時代にあって、“芸術”体験の在り方はそのまま創造性と直結するようになったのだと言えるかもしれません。
人の心の在り様に応じて、芸術体験の形も変わっていくもの。今週はあくまで無理なく自然な仕方で、自分なりの芸術体験を追求してみるといいでしょう。
今週のキーワード
ソウルメイキング