おうし座
柔らかさと奥行き
リラックスした時間の流れを
今週のおうし座は、「今植た竹に客あり夕すゞみ」(柳居)という句のごとし。あるいは、何気ない行動の背後に深い呼吸を添わせていくような星回り。
旧暦5月13日(現代で言えば6月下旬)は「竹酔日(ちくすいび)」と言って、竹が酔っているので気付かれず枯れないとされ、竹を移植するのには最良の日とされました。
掲句で描写された情景は、庭に植えたばかりの竹と、それを夕涼みしながら眺めている客と主。座敷には早々に明かりが灯されて、当然お酒の用意もされているでしょう。どこか新鮮で爽やかな風情と、リラックスした時間の流れを同時に感じさせる一句です。
竹は健やかにまっすぐ成長していく植物で、「竹を割ったような」という表現もあるように、あっさりさっぱりした単刀直入な性分を表します。
ただ一方で、ストレートで含みがなく、柔らかさや奥行きに欠けているとも言えますが、これはどこか今のあなたにも通じているのではないでしょうか。
今週あなたが取り組んでいくべきは、吸う息をゆっくりと深く肺の奥まで入れていくようにして、ひとつひとつの行動や予定に、余裕をもたせていくこと。そうすることで運気の流れを「客」のようにゆったりと落ち着かせ、まろみを出していきましょう。
養生の秘訣
「カルチャー(文化、教養)」の語源が「耕す」を意味するラテン語「colore」に由来するように、精神的な豊かさは柔らかな大地の上にこそ実るもの。江戸時代を代表する俳人・与謝蕪村(よさぶそん)は、ちょうどそんな光景を俳句にしてくれています。
「畑うつや うごかぬ雲も なくなりぬ」
田を返し、土をいじっているうちに、さっきまで垂れこめていた暗雲がいつの間にかなくなってしまった。ただそれだけのことですが、蕪村はこの句を再興した芭蕉庵で句会を開いた日に詠んだのだそうです。
句を詠むことを通じて芭蕉の精神を汲んでいく行為は、蕪村にとって心を耕し、土に空気を入れていく畑仕事であり、どんな悩みや苦しみも晴らしてくれる養生の秘訣だったのでしょう。
逆に心が耕されないと、人ってどんどんトゲトゲしくなるものです。今週は、直接会う人もできるだけ土が柔らかくなるような人を選んでいくといいかもしれません。
今週のキーワード
心を耕す