おうし座
体感で人と交わる
春の宵の空気感
今週のおうし座は、「マダムX美しく病む春の風邪」(高柳重信)という句のごとし。あるいは、ふと目の止まっただけの相手にこそ、きちんと敬意を込めて接していくような星回り。
貴婦人の意味もある「マダム」を酒場の女主人に使うような店だと言われると、いささか敷居の高い店に違いないと構えてしまう。ですがたまたまそこに年配の常連客でもあらわれて、世間話を始めたのを聞いていると、ぐずぐずと治らない春の風邪を引きずっている。
そんなマダムの優雅な存在感と、人としての謎めいた奥行きとに、作者は敬意をもって「X」と付けたのでしょう。
あくまで酒場ですから、主人のご機嫌を伺わなければいけないという義務はありませんし、隣りの世間話など流して自分の恋路や将来のことに頭を悩ませていればいい状況で、作者はそれをしなかった。
今週のあなたにもまた、この作者のスタンスと通じるものが求められているのだと言えます。もちろん、マダムのいるような酒場に来ている時点で、ある程度の余裕はある訳ですが、決して自己完結したまま終わっていない。
こちらの想像力をきちんと掻き立ててくれる存在には、こちらもそれなりの“余地”を残して、簡単なジャッジをはさまずに接していこうと。そんな春の宵のような空気感がどこか漂う今週です。
内臓の感受性
例えば服のセンスよりも、香りのセンスがいいほうが、好感度が上がりやすいという話を聞いたことがありますが、これはとても大事な教えです。相手を深いところで捉えようと思ったら、できるだけ直接体感した情報から相手のことを想像することが大切なんです。
東京芸術大学で体育の先生をしていた野口三千三(のぐちみちぞう)氏は、独自の体操理論や人間哲学で知られた人物です。
彼は絵を描くにも歌を歌うのにも「内臓の感受性」が基本であり、それを高めるためにまず生徒へ“はらわた”を“つかんでもらう”ことが先決だと、「家に帰ったら新聞紙でもひき、その上にしたものを両手でつかみなさい」というような課題を出したそうです。
今週のあなたは些細な対人関係の中で、どこまでディープな感性を使っていくことができるかが問われていくでしょう。どうせ掴むのなら、小手先の会話や見栄で勝負するのでなく、相手のはらをつかまえること。
今週のおうし座へのキーワード
はらわた