おうし座
一点突破
間欠泉のように
今週のおうし座は、『牡鹿の前吾もあらあらしき息す』(橋本多佳子)という句のごとし。あるいは、何かの拍子にジョアアアアアアと肚の底から何かが溢れてくるような星回り。
鹿は万葉集の昔からその泣き声を、秋の淋しいものの象徴として詠まれてきましたが、作者はつがいとなる相手を求めて求めて鳴いている荒々しさを、わが身に引き寄せています。
鹿はメスをめぐって多数のオスが角を突き合わせて争い、時にそれは命がけの激しさを伴いますが、実際に作者はそんな鹿を目の前にして、おのれの中にある得体の知れない激しさを再発見したのでしょう。
「あらあらしき息」をしているおまえ(牡鹿)だが、私も負けてはいないのだと高らかに宣言するか、あるいは密かにつぶやいているのかも知れない。いずれにせよ、ここで作者のうちで近代人的な心性がすっと後ろにひいて、ある種の古代人的な心性や記憶のようなものが、間欠泉のように噴き出して前面に出てきているのだと言えます。
おそらく、「牡鹿」はあくまで偶然に飛び込んできたきっかけであり、それ以前から作者のなかで地殻変動のようなことが静かに進行していたのではないでしょうか。
9月3日におうし座から数えて「情動の表出」を意味する5番目のおとめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、ここ最近貯め込んできたものを一気に吐きだしていくことになりそうです。
一人のために
マザー・テレサはあまりに有名だったこともあり、未だにさまざまな毀誉褒貶(きよほうへん)に晒されていますが、改めて彼女のやった仕事の本質を振り返ってみると、それはただただ瀕死の状態にある人の最期を看取ることであり、彼女自身もしばしば「一人の人のため」ということを強調していたことが思い出されてきます。
一方で、現代人が好きなのは「多数の人」であり、一人の人の死に関わっているよりも、できるだけ多くの人に認知されたり、人気があったり、「社会」を変えるいけることの方が大切だし、価値があると考えられています。
けれど、本当にそうでしょうか?
現代人は目に見えない多数のために働くという口実のもと、目に見える目の前の人間のために何かするのを避けてしまっているようにも思います。
今週のおうし座もまた、できればマザー・テレサのように、常識的には最も非効率的に思える行為こそ大切にしていきたいところです。
おうし座の今週のキーワード
ジョアアアアアア