おうし座
台座づくり
尊厳のある最後を迎えるために
今週のおうし座は、中世の念仏結社「二十五三昧会」のごとし。あるいは、同じ長期的な目的を共有できる相手と何らかの契約を結んでいこうとするような星回り。
平安中期、都が陰謀によって死に追いやられた早良親王(桓武天皇の弟)たちの亡霊につきまとわれていた頃、貴族のあいだで個人の死後のことが大きな問題となっていき、そのきっかけとなったのが源信の『往生要集』でした。
一箱の肉体はまったく苦である。貪り耽ってはならない。四方から山が迫ってきて逃げるところがないのに、人びとは貪愛(とんあい)によって覆われ、深く色・声・香・味・触の欲望に執着している。永遠でないのに永遠に続くと思い、楽しみでないのに楽しみと思っている。(中略)まして刀山・火湯の地獄がそこに迫っている。
本書に登場する霊魂は六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天)を輪廻するという死生観は、その後絵画や説教などを通して日本人のあいだに広く定着していきました。現世への執着を捨て、心乱すことなく臨終を迎えることで浄土に往生するという浄土教の教えは当時の人びとにとって決して観念的なものではなく、きわめて現実的なものだったのです。
そして、ここで注目すべきは源信自身が指導者となって結成された「二十五三昧会(にじゅうござんまいえ)」というもので、極楽往生を目指すという目的で集まった25人で「善友」の契りを結び、互いの念仏行を助け合いながら立派に臨終を迎えていくべく、毎月15日に共に念仏三昧を修したのだとか。
13日におうし座から数えて「協力関係」を意味する7番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自身の願いを遂げるための行を助け合えるような結びつきを一つ一つたぐり寄せていきたいところです。
尊厳の感覚とその台座
仏典によれば、かつてゴータマ・ブッダは母・摩耶の胎内から出て7歩歩き、蓮の花の中に立って、「天上天下唯我独尊」という第一声を放ったと言われています。
これは自分より優れたものなどないという思い上がりなどではなく、この世に個として存在する「我」より尊い存在はないという自らの尊厳への確信に貫かれた言葉。そして、蓮の花はそんな尊厳にみちたブッダを支える玉座、すなわち「背後から支える力」として彼の聖性と分かちがたく結びついており、聖地における磐座(神の宿る自然の依り代)に近い役割を担っていたのだとも考えられます。
つまり、人が自分本来の尊厳を取り戻していくためには、まず自分にとっての「蓮の花」を見つけていかなくてはならないのです。
その意味で今週のおうし座は、普段あまり意識をそこに向けることのないような、秘やかなパートナーシップや結びつきに焦点があたっていくでしょう。
おうし座の今週のキーワード
ホスピスやターミナルケアの原型としての「二十五三昧会」