おうし座
自己限定の外へ
蕪村の覚悟
今週のおうし座は、『かづらきの紙子脱(ぬが)ばや明(あけ)の春』(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、ひとつの脱皮を遂げていこうとするような星回り。
「かづらき」とは作者の生誕地からも望める葛城山、ならびに葛城山に住まう大神で、善いことも悪いことも一言で言い切るという伝説のある一言主(ひとことぬし)の神のこと。
なんでもこの神様は怪奇な容貌であったために昼間は姿を見せず、闇夜のみ架橋に従事したという言い伝えもあったとか。そのため、わざわざ「夜」という言葉を使わずとも、「かづらきの」ということで、ここでは暗に“冬の暗い闇”のニュアンスが含まれており、そこから「明けの春」で、長い夜があけて、新たな春にいたると言い掛けてみせたのです。
また、冬の防寒着として着られた「紙子(かみこ)」の箇所も、「葛城の神(かみ)」と音を掛けていますし、さらに主に貧しい人々のあいだで着られたみすぼらしい紙子を「脱いだならば」と表現することで、新春の華やかさが軽やかに演出されています。
掲句は作者が俳諧の宗匠となった翌年の春の句集の巻頭に据えられたもので、おそらくみずからの俳諧を新しい境地へと脱皮させていくのだという覚悟をこの句に込めていたのでしょう。
2月6日におうし座から数えて「区切り目」を意味する4番目のしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自身の歩む道をどんな方向へと進めていきたいのか、改めて心に思い定めていくべし。
「四十にして惑わず」の本来の意図
『論語』を読んだことはなくても、「四十にして惑わず」という孔子の言葉は聞いたことがあるはずです。
子曰わく、吾十五にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知る。
30歳でひとり立ちして、40歳で人生に迷いがなくなった、と。前者はともかく、後者まで言い切れる人が果たして世の中にどれだけいるでしょうか。ここでやっぱり孔子はそう言い切れる特別な人間で、自分とは違うんだなと思ってしまった人は少し待って下さい。
というのも古代において「惑」という字は「区切る」という意味で使われており、したがって先の一文も、「四十にして区切らず」という意味になってくるからです。転職市場における35歳限界説にしてもそうですが、40歳くらいになってくると、どうも人は自分を区切ったり固めたりしがちで、自分ができるのはせいぜいこれくらいとか、自分の専門外のことはできるはずがないなどとと思い込み始める訳ですが、あえてそういう自己限定をぶち壊してみようというのが、孔子の真意だったのでしょう。
その意味で、今週のおうし座もまた、そんな「不惑」の壁と対峙していくタイミングなのだと言えそうです。
おうし座今週のキーワード
「限界などない」と改めて言い放つ