おうし座
獣はともかく、人間はどうか?
力の指標
今週のおうし座は、『瓜坊も鼻使ひをり秋の土』(小川軽舟)という句のごとし。あるいは、自分がいまどれだけの力を持ち得ているのか、測り直していくような星回り。
秋になると人家の近くの畑まで出てくるために秋の季語とされている「猪」ですが、その子どもの「瓜坊」となると、狂暴さよりちょこちょこと動き回る可愛らしさのイメージが先行するはず。
掲句では、そんなまだ力もないだろう瓜坊が、それでも鼻を動かし山中を歩きまわる熱心な様子や、地面を掘り返した跡の意外なほどのすさまじさへの作者の戸惑いが率直に詠まれています。
それにしても、彼らはなぜ猛然と地面を穴だらけにしていくのか。調べてみると、どうも餌となるミミズや虫の幼虫を獲るためのようですが(確かに山にはヘビと見まがうほどのミミズもいる)、彼らにとってどれだけ土を鼻で掘り返せるかが、生き延びていく力と直結しているのでしょう。
人間の場合、そうした力の指標は猪ほど分かりやすくはありませんが、それだけに本人も気付かないうちに「歯牙を抜かれ」たり、「足腰が萎えて」しまうことも珍しくありません。
その意味で、18日におうし座から数えて「個人的強み」を意味する3番目のかに座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、何をどれだけ鍛え直していくべきかということをここで改めて見定めていくべし。
堂々と休む力
例えば山林伐採の労働者たちは、老練になればなるほど入って日が浅いアルバイトの性急さをあざ笑うかのように、ほとんど禁欲的なほど小さな歩調でゆっくりと山道を登るのだそうです。さらに、十分すぎるほどの「食休み」を取りながら、最後まで汗をかかないで仕事を終え、長老格になるとそこに周囲を退屈させない話術さえ加えながら、山を下るのだとか。
彼らは「山林」という苛酷な環境において、ちょっとしたストレスや焦り、神経の摩耗がどれだけ自分たちの身を危険に晒し、命取りになるかをよく知っており、からだやこころの緊張を和らげるための習慣づけを日頃からよく心がけているのでしょう。
一方、精神科の患者には休息が不得手だったり、ほとんど休息抜きの労働を長時間続けがちだったりして、そのために結果的に働けなくなってしまったような人が少なくありませんし、歴史的にもいかなる職業であれ(奴隷労働においてさえ)労働の最中に「ささやかな遊び」や「ひそやかな愉しみ」を取り入れてきたのです。
今週のおうし座もまた、力ということを「休みなく働くこと」に直結させるのではなく、逆にどれだけそのリズムを健全なものに整えられるかという観点から捉え直してみるといいでしょう。
おうし座の今週のキーワード
息遣いの繊細さと大胆さを取り戻す