おうし座
流れ流れてどこまでも
人間経験の波打ち際
今週のおうし座は、海に漂うクラゲのごとし。あるいは、生命体としての自然さを追求していこうとするような星回り。
日本に200~400種はいるとされるクラゲは、もちろん泳ぐこともできるものの、基本的には水流に逆らうことも、抗うこともなく、水の動きに合わせて漂っています。
というより、水の流れのまったくない環境で飼育したり、むりやり泳がせ続けようとすれば、疲れて沈んでしまうか、死んでしまうのだそうです。哺乳類とは異なり、中枢が存在せずに身体全身に張り巡らされている散在神経系であるクラゲは、そうして水にゆられ、水となり切っているのが基本的なスタイルなのです。
実際に身体の約95%が水分からなり、ひとつの傘の拍動が、移動、呼吸、摂餌、排泄、栄養供給など複数の役割を兼ねている彼らはほとんど「生ける水」であり、水に身体の一部を溶かしつつ、水との差異を絶妙なところで維持しながら「生きる」ことを成立させている稀有な存在なのだと言えます。
そしてそれだけでなく、人間であることの醜さや不自然さから極めて対照的な存在であるところのクラゲは、単に幻想的なムードを演出してくれる鑑賞対象であるばかりでなく、私たち人間の在り方や生き方を根底から揺さぶり、変更や修正を促してくれる反省材料ともなるはず。
9月26日におうし座から数えて「生活の流儀」を意味する6番目のてんびん座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、どうしたら機能を複雑化しなくても混沌とした環境下で生き延びられるのか、ということがテーマとなっていきそうです。
旅路は風の通り道
例えば「風」もまた水流と似てはっきりと目に見えず、突如としてあらぬ方向から吹いてくるし、強くなってはなぎ、すぐに方向を変え、予測や予断を許しません。古代ギリシア語では、そんな「風」のことを「プネウマ」と呼んでいました。普遍的な実体としての「霊」のことです。
そして西洋哲学の伝統では、そんな風や霊がよどんで情念として沈殿した状態が、個別的な魂(プシュケー)であり、自分が自分であることの中核なのだと考えられてきました。そこでは、確固とした自分を持つことだとか、どんな風にもびくともしない堅牢な教会のごとき業績を残すことが、崩れにくい「優れた個人」の見本とされてきた訳です。
そういう意味で、今週のおうし座はそうした近代的な価値観とは別の、もっとゆらめいたり、しなったり、情勢に応じてどこかへ流れていってしまうような、霊の視点に寄せて「自分に何もさせないでおくこと」がテーマになってくるのだとも言えるかも知れません。
おうし座の今週のキーワード
自分を包みこむ大きなものに合わせて動く