おうし座
時の流れが逆流していく
はざまの地点にて
今週のおうし座は、『見て白い明け方の町夏休』(藤田哲史)という句のごとし。あるいは、みずからの来し方行く末を改めて振り返っていこうとするような星回り。
子供のふとした一言をそのまま書き写したかのような一句。しかし、句全体に漂うどこか物憂げな空気感は、映画や物語のオープニング風景というより、むしろエンディングに向かっていく際のそれといった感じは否めないように思います。そもそも夏の夜というのは、甘酸っぱいものから怪談めいたものまでさまざまなドラマに満ちているものですが、少なくともここではそれらはもはや過ぎ去りつつある過去なのです。
「見て」という呼びかけは、そうして長かった「過去」から始まりつつある「未来」への視点の転換を促している訳ですが、いつもならいそいそと日常生活の始まる気配が感じられるはずの「明け方の町」は、まるでもぬけの殻のようにシーンとしており、ただそうした異常事態も、最後に取ってつけたように置かれた「夏休」という語で回収されています。
とはいえ、人は人生のどこかでこうした「白紙のまま宙づりにされた未来」や、「分かりやすい意味がまだ付与されてない未来」へと、それでも突き進んで行かねばならないときが来るものなのではないでしょうか。
その意味で、8月12日におうし座から数えて「ひとつの終わり」を意味する10番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、過ぎ去りつつある過去をきちんと過去のものとするべく、未来への一歩を踏みしめていくことになるでしょう。
自分とのかくれんぼ
例えば、今よりずっと未熟だった過去の自分や、どうしても許せなかったことごとが、まるでかくれんぼのように現在のあなたを取り巻く状況や、これから起きてくるだろう事態の中に潜んでいるのだと考えてみてください。
つまり隠れているのも自分ならば、それを見つけていくのもまた自分に他ならない。すると次第に、未来は過去の映った鏡となり、過去は未来の記憶として見えてくるでしょう。
そういう通常の「時間の流れ」が逆流しているかのような感覚の中で、あなたはかつて苦しかった頃、何をこの宇宙に誓ったのかを思い出し、そうして初心に返っていくことで再び一歩二歩と前進していく力強さを得ていくことができるはず。
かくれんぼしている自分を見つけ、前に足を踏み出していく中でこそ、白紙の未来に何がしかのビジョンを描いていくだけ想像力が、やっと発動してくるものなのではないでしょうか。そういう意味では、今週のおうし座はまだまだ自分はそんな道の途上にいるのだと、改めて思い知ってゆく時なのだとも言えるかも知れません。
おうし座の今週のキーワード
過去こそ未来の記憶である