おうし座
数えきれない反復の先に
探すのではなく試みるものとしての<私>
今週のおうし座は、「自己をならふ」という言葉のごとし。あるいは、<私>探しの救いようのないカッコ悪さをものともせずに、それを体現していこうとするような星回り。
道元の『正法眼蔵』にある有名な言葉に、「仏道をならふといふは自己をならふなり。自己をならふといふは自己をわするるなり」というものがあります。
いい年をして「自分探しをしています」なんてことを言えば、必ず「自分より先に仕事を探せ!」などとツッコまれてしまいそうですが、道元の言葉を逆さにすれば、人は誰もが自分を忘れて何かに熱中することで「自己をならふ」、すなわち、他ならぬ私が私らしくあるとはどういうことなのかを見つけようとしているのだと言えるのではないでしょうか。
しかし、「自分探し」は実際のところほとんどの場合は失敗に終わります。人生なんてさしてカッコよいものではないし、誰もが英雄や天才であるわけでもなし。本当の<私>を探しあぐねているうちに死んでしまうのが関の山である訳ですが、これも裏を返せば、自分探しの途上で死んでしまうのが人生に他ならないのだとも言えます。
そもそも、「自己にならふ」とは、意識的に反復したり苦労してなろうとしなくても、自然に「ほんとうの自己」に定着し、実現できるようになることを意味しており、どんなにカッコ悪かろうと、「自己になる」よう何度も何度もトライすること抜きに、偶然「ほんとうの自己」を見つけることなどある訳がないはず。
6月7日夜におうし座から数えて「自分が自分であること」を意味する5番目のおとめ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分は「ワンオブゼム」に過ぎないという意識を頭の隅に置きつつも、俄然「オンリーワン」であるためのアクションを積極的に試みていきたいところです。
ネットに落ちていないもの
道元の先の言葉は、「自己をわするるといふは万法に証せらるるなり。法に証せらるるといふは、自己の心身および他己の心身をして脱落さしむるなり」と続き、これは簡単に解せば「自己を忘れるとは、宇宙の理法を知ることであり、宇宙の理法を知るとは、宇宙と一体化するということ」という意味になります。
これは逆に言えば、ありうべき自己になろうという試みさえしなければ、宇宙と一体化することも、宇宙の理法を知ることも、ましてや一時的にでも自己を忘れることさえできっこないんだということでもあります。
最近では、宇宙と一体化することも、宇宙の理法を知ることも、ネットで検索さえすれば簡単にわかるような気分になりがちですが、ただ閲覧しているだけでは決して自己になることもなければ、自己になろうと試みることもないのではないでしょうか。
その意味で、今週のおとめ座にとって、どうしたら実際の現実世界において「自己になる」ための反復や意識的な努力を実行していけるかどうかが問われていくでしょう。
おうし座の今週のキーワード
習慣の後についてくるものとしての「自己」