おうし座
きちんと戦うということ
「大きな子どもたち」からの卒業
今週のおうし座は、魔法のランプを打ち捨てるアラジンのごとし。あるいは、偽りの教えから改めて抜け出していこうとするような星回り。
童話では、アラジンが魔法のランプをこすって突然大金持ちになったり、宮殿やたくさんの宝石が魔法の杖の一振りで現われたりします。こうしたバカげた、大げさな教えを大人になっても真に受けているような人間なんているはずがないと普通は考える訳ですが、実際はそうではありません。
私たちの世界では狩りであれ耕作であれ建設であれ、事物との絶えざる戦いを通じて初めて何らかの豊かさを得ることができるのだとよく認識している歴戦の大人たちよりも、かわいらしい言葉をかければ自分が望む贈り物を受けとることができるのだと、どこかで信じ込んでいる「大きな子どもたち」の方がずっと優勢なのです。
ある意味で人間の諸悪の根源はこうしたある種の「無邪気さ」にあるのだと言えますが、自然はいつも人間が油断したところに襲いかかってくるものであり、「好意の期待」などという幼稚なふるまいは本質的には一切通用しない相手であるということを、私たち現代人はどこかで忘れてしまっているのかも知れません。
その点、5月1日に自分自身の星座であるおうし座で新月を迎えていく今週のあなたなら、ただ微笑み、受けとり、お礼を言うだけですべては済むと思い込む代わりに、ツルハシを手に果敢に自然に挑みかかっていかんとする方を改めて選択していけるはず。
誤解と史実
絶対に成就させたい願いごとが出てきたとき、日本社会というのはみずから退路を断って、決死の覚悟を持ってことにあたる「背水の陣」を敷くことをよしとする風潮があるように思います。戦時中の特攻隊しかり、自分を追い込むためにあえて高級車を購入したり、家賃の高い部屋に住んだりして、イチかバチかの大博奕をしかけていくわけです。
ところが、漢軍を率いて趙軍を打ち破った韓信が実践したという、史実における「背水の陣」はこうした大博打のことではありませんでした。もちろん、決死の覚悟を持ってことにあたるという意味は含んでいるのですが、韓信は気合で難事を突破する猪突猛進の武将というより、むしろ策略に長けた軍略家でした。
だからこそ、「水を背にして陣をしいてはいけない」という当時の兵本の基本をあえて無視して敵を油断させ、さらに小競り合いでもわざと負けてみせた上、軍需物資を戦場に打ち捨て慌てて逃げたふりまでして決定的な隙をつくり出し、少数で敵の大軍勢に耐えた末、最後には別動隊に敵の本拠地を襲わせて、見事自軍を勝利に導くことができたのです。
その意味で今週のおうし座もまた、もし負けられない戦いに臨むにしても、迷信深い精神論に陥るのではなく、事前にきちんと情報収集や敵情分析を重ね、綿密に作戦を練っていくことができるかどうかが問われていくでしょう。
おうし座の今週のキーワード
一にも二にも、用意周到であること