おうし座
殺すと捨てるのワンセット
こちらは5月24日週の占いです。5月31日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
いのちの手触り
今週のおうし座は、「鼈のくびきる夏のうす刃かな」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、瞬間的に汗がひくような思いや感覚を味わっていくような星回り。
「鼈(すっぽん)のくびきる」だけでもハッとさせられる出だしですが、掲句はそれだけで終わりません。つづく「夏のうす刃(ば)かな」という表現には、その刃が自分の首へとすべっていくような、思わずヒヤッとするような危うい感覚が込められているように思います。
もちろん、冷静に考えればスッポンの首と自分の首はまったく無関係であり、スッポンが死のうと痛くもかゆくもないはずです。しかし、想像力の次元では両者は容易に結びついてしまう。
首からしたたる汗さえもスーッとひいていくような場面描写のなかに、いのちの手触りを熟知した作者の鋭い感覚が伺えるのですが、これは実際に他の生物を「殺す」という感覚をごく身近に感じている者でなければ、まず詠むことのできない一句とも言えるのではないでしょうか。
26日におうし座から数えて「殺し、殺されうる関係」を意味する8番目のいて座で皆既月食を迎えていく今週のあなたもまた、いつの間にか現代人が喪ってしまったひりひりとしたいのちの手触りを取り戻していくことになるかも知れません。
‟惰性”を斬り捨てる
人間誰だって楽をしたいし、ともすれば‟多分”をつけて、今日や明日について考えていきたいもの。ただ、それがいつの間にか「これまでも、昨日もこうだった。だから今日も、そしてこれからもこうであるに違いない」となるまで、そうは時間はかかりません。そうして惰性のままに、‟惰性”であるという考えそのものを頭から振り払ってしまうのです。
そうして、火事が起きても「ちょっと待てよ」と立ち止まったりして、本当に死んでしまったりする。国家規模の災難を経験していた兼好法師は、やはりそうした人間心理を踏まえた上で、『徒然草』の第五十九段に「大事を思ひ立たん人は、去りがたく心にかからん事の本意を遂げずして、さながら捨つべきなり」と書きました。
つまり、本当に事を起こさんという志があるなら、心に引っかかることや心配事があっても、それらを捨ててやってしまうべきで、そうでないと何も出来ずに一生が終わってしまうと言っているのです。
今週のおうし座もまた、今「これだ」と感じたことがあるなら、やらない理由を思い切って捨てていくべし。
今週のキーワード
自然の大きな流れにかたまりを明け渡していくこと