おうし座
夢を担う
つかの間の夢
今週のおうし座は、「平凡な言葉かがやくはこべかな」(小川軽舟)という句のごとし。すなわち、さまざまな力加減に思いを馳せていくような星回り。
「はこべ」は道ばたなどによく自生している、春の七草の一つ。きっと作者も何の気なしに道を歩いていて、道ばたの陽だまりに思いのほか濃い緑の草を見つけたのでしょう。
それがほころぶように小さな白い花を咲かせている。こんな身近な場所で、これ以上ないほど慎ましく、春が来たことを告げているのだと、作者はそこで改めて気付いた。
やっと巡ってきた春を喜び、それを歌に残してきた先人たちや、その系譜の切っ先に立っている自身の姿を、そっと「はこべ」に重ねてみせたのかも知れません。
四季は繰り返される一方で、人生という時間は後戻りすることなく進んでいく。それは無情な現実ではあるけれど、だからこそ、永遠に循環する時間の海に浮かぶ束の間の夢として私たちの傍らにあり、それを大事に感じることができるのだとも言えます。
29日におうし座から数えて「奉仕」を意味する6番目のてんびん座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、野辺に咲く「はこべ」に自身のささやかな喜びを重ねてみるといいでしょう。
置かれた場所で咲く花は
名前なんかなくても、野に咲く花は、見る者をハッとさせてくれます。
それはおそらく、おのれの小ささに怖気づいていないから。自分がどれだけ不安かを語るより、自分の幸せを信じて疑わない素直さがそこにあるから。
花は恋人のために咲く訳でなし。そもそも他の誰かのために咲くというのではなく、自然とそうすることがおのれの定めだと分かっているのでしょう。
それは不自由でしょうか?不幸なことでしょうか?
どうしたってそんなふうには思えません。むしろ、仕事ひとつするにも相応の理由や報酬を求めずにはいられない現代人とは対極であるからこそ、そこには普遍的な人としての在り方のヒントがあるのではないでしょうか。
だから我々はハッとするのかも知れませんね。花を咲かせ、実(身)を落ち着かせ、やがて死ぬべき時に死ねばいい。今週のおうし座は、そんな自然の成り行きを直接肌で感じとっていきたいところです。
今週のキーワード
自分の身を任せるべき先