おうし座
オリオン座の右はじに
行方の確認
今週のおうし座は、自らの死後の行方について語る、野尻抱影のごとし。進むべき方角への推進力を自ら紡ぎ出していくような星回り。
現在の渋谷ヒカリエがある場所で、かつて90歳となった星の民俗学者・野尻抱影は「星に感じる畏怖」と題する講演を行い、その締めくくりに自分が死んだらオリオン座の右はじ=亡き妻が眠る宇宙霊園に葬られたいと語っていたという。
ただし、これは野尻抱影お得意の冗談であったそうで、その頃よく口にしていたそうです。
「オリオンのね、長方形の四つ角のところ、…そこにねえ、神話に出るアマゾン女兵が……得意の盾を持って槍を持って立っている。これがぼくの“オリオン霊園”の番人ですよ。」(1977年2月5日放送NHKテレビの対談より)
そして本当に、放送された年の秋の日の早暁に亡くなられた。正確には、1977年10月30日午前2時45分頃。ちょうどオリオン座が南中し、子午線上にはオリオン座γ(ガンマ)星ベラトリックス(ラテン語で「女戦士」の意味)が昇っていたという。
今週は、大切なもの、愛すべきものへの洗練された崇敬を示すことができるかが、ひとつの焦点となってくるでしょう。
手を洗う
「手を洗ひ寒星(かんせい)の座に対(むか)ひけり」(山口誓子)とは、まさに憧れの星影を拝む際の心持ちを見事に詠んだ句の1つといっていいと思いますが、案外なにかの拍子にふと思い出してそうしたのかとも思われます。
例えば、夜中にふと目をあけたら、カーテンを閉め忘れていたガラス窓越しに星が見えた。それで、ずいぶん久しぶりに星を見たと思ったり、いやいや、いつも帰り道に歩きながら視界には入っているが、疲れや慣れでこころが曇っていたのだと苦笑したり。
それで、改めて手など洗ってみたのかもしれません。過去を水に流し、くたびれた自分を水ですすいで、いざゆかん。そんな気分で、22日の日食の新月を過ごしてみてください。
今週のキーワード
想像力の果て