おうし座
過剰であること
やり過ぎて突き抜ける
今週のおうし座は、「クリスマスイブ雨アルミニウムの牛」(田島健一)という句のごとし。あるいは、普通だったらこうするだろうというのをサッとかわしていくような星回り。
まず「雨」という言葉の置き方がおかしい。中五の「イブ雨アルミ」という語感の中毒性。「牛」で終わる唐突さ。前衛的というよりは、いっそ幼児的で無邪気な思いつきの結果、たまたま生まれてしまったかのような印象さえ受けます。
AIがつくった句ともどこか違っていて、俳句のアルゴリズム、すなわちこれを使えば俳句風になるような表現も、ここではあえて避けられているように思います。つまり、概念的なもの、意味的なものが排除されて、言葉の音の連なりと、単語の質感のみの組み合わせが徹底的に追求されている。
それは結局、概念的・意味的なものを組み合わせて持ってくると、何を言っても誰かの言葉になってしまうからなのではないでしょうか。そして作者はおそらく、何を語るにせよ自分の言葉で語ることこそが俳人の仕事と考えている。それが俳人としての生理なのか、個人的なこだわりなのかは分かりませんが、これはなかなか普通にはできないことです。
その意味で、22日におうし座から数えて「追求すべき目標」を意味する10番目のみずがめ座の始まりで木星と土星の大会合が起きていく今のあなたもまた、自分なりの言葉や語りを模索していくことがテーマとなっていくでしょう。
一個の完全な自然人
少しでも文化的な人間にとって、トルストイの『コサック』に登場するエローシカ叔父が言うような「自然と一つに成ること」がどれほど困難なことであり、またその体験がどれほど思いがけない体験であるかはなかなか想像できないかも知れません。
それほどに、人間における自然性と自意識の矛盾は根源的なものであり、しょせんは誰にも解決できない問題なのですが、その一方でトルストイという文学史上に限らず歴史上稀に見るじつに不思議な人物は一個の完全な自然人の姿を体現していました。
彼は老境枯淡の域に入ってなお、いやますます異常な生命力を示し、若い人たちと一緒に畑仕事をしたり、一日中テニスをしたり、そうかと思うと今度は子供たちの輪の中に入って部屋中を駆けまわったり、スケートに興じてはしゃぎ出し、ついには数十キロもの自転車旅行へまで出かけて暴れまわっていたのです。
彼は一方では近代的人間の根源的病いとも考えられている自意識過剰の極めた人間でしたが、その一方で鬱蒼たる太古の原始林のような、なまなましい生命の樹液のような粘っこさ、息をつくのも苦しいほどの野生的豊穣を根底に湛えることのできた人間だったのです。
彼ほどにとは言いませんが、やはり12星座のうち最も自然人に近いおうし座のあなたもまた、今週は思い切った理想の提示や追求を掲げてみてはいかがでしょうか。
今週のキーワード
野生的豊穣