おうし座
覇気を放つ
自分自身を出し切ること
今週のおうし座は、「更衣鼻垂れ餓鬼のよく育つ」(石橋秀野)という句のごとし。あるいは、はかなげな情愛を生きることへの情熱が突き破っていくような星回り。
前書きには「病中子を省みず自嘲」とあります。作者は病気により39歳の若さで亡くなってしまいましたが、その病床において自身の俳句を一段高い領域へと昇華していった人でもありました。
掲句には、夫や子に対する女性らしい愛情や感謝と人間としての悲哀とが、絶妙に入り混じりながらも込められていますが、「鼻垂れ餓鬼のよく育つ」と詠うあたりではどこかで置かれた状況を面白がっていて、本来の気性の激しさがよく表れているように思います。きっとこれが男性だったなら、こうは詠めなかったでしょう。
どこかでさびしさを引きずりつつも、自分の死を突き放して受け止め、そこに感傷主義を持ち込ませないだけの覇気を放っている。
病気になる前から気性の激しさは秘めていたのだと思いますが、病床以後はそんな自分自身を出し切るようになっていったのではないでしょうか。
5月30日におうし座から数えて「情熱の発露」を意味する5番目のおとめ座で、上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、自分自身を出し切っていくために、どこまで自分を追い込められるかが問われていきそうです。
業病と言葉の冴え
前世の報いか、それが自分というどうしようもない存在の証しなのか、いずれにせよ、なぜ抱え込んでしまったのか誰にも上手く説明できず、自分でもいまだ納得できないような厄介な事体を「業病」と言います。
それは逃れようとしても逃れられないものなのですが、ただそれは人から人間性やその複雑さを奪っていく形で働くだけでなく、掲句の作者もそうであったように、むしろその複雑さや奥深さが増していくように働くことの方が多いのではないでしょうか。
句を詠むという行為は、作者にとって何よりも生きることの中心にあったのです。例え、子どもの世話はできなくなっても、句を詠むことはやめられなかったし、だからこそ病床以後、作者の句は深まったのです。
そう思うと、言葉はナイフのように人の心に突き刺さる凶器にもなると同時に、やはり「薬」に他ならない。そんなことをきちんと自分の身で実践・実感していくことは、今のあなたにも必要なことなのだと感じます。
今週のキーワード
ギリギリの存在証明