おうし座
言霊と充実
禁断の果実を食べる
今週のおうし座は、『華氏451度』の主人公モンターグのごとし。あるいは、外から与えられる幸福よりも内からの充実をこそ選んでいこうとするような星回り。
「自分は幸福になるべきだ」と考え始めると、あらゆる種類の不満に目覚めていくものですが、そうした幸福の追求が行き着く先の悲劇を、1953年にいち早く描いたのがレイ・ブラッドベリの『華氏451度』でした。
その暗黒の未来社会は誰も本を読まなくなった世界であり、主人公は人々が本のせいで強い感情に突き動かされたりしないよう、本を焼くことを仕事とする「焚書官」をしていました。ところが、あるとき星を見たり、草の匂いをかいだり、タンポポで恋占いをしたりする少女と出会い、すっかり感情を欠いていた自分の状態に違和感を覚え、徐々に美や感動のある世界に目覚め、自分が焼いている本にどんなことが書かれているのか知りたくなります。
やがて、主人公は“文明人”が幸福だと考える無感動な人生を送るより、深い感動や感情をもって苦しむほうがましだと思うようになっていくのですが、こうした主人公の心理はどこか今のおうし座の人たちにも通底しているのではないでしょうか。
23日におうし座から数えて「深い内的充足」を意味する2番目のふたご座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、幸福を求めるのではなく、知識や芸術などを通していかに真理や真実味のある感情を積極的に受け入れていけるかどうかが問われてくるはず。
発語の成熟
例えば今週は「言霊」ということについて真剣に考えてみるのもいいでしょう。奈良時代の語彙を収集した『時代別国語大辞典上代編』(三省堂)では「言霊」について次のように記述しています。
「ことばに宿る霊。ことばに出して言ったことは、それ自身独立の存在となり、現実を左右すると考えられた。名に対する禁忌の心持とも共通する信仰・感覚である。」
ふだん自分が口に出して言っている言葉だけでなく、PCやスマホでなんとなく打ち込んだり、検索している言葉、LINEでよく使っているスタンプなど。それらを改めて見直した上で、自らの存在価値をその上に置いていきたいと心から思えるような言葉を定めて、自覚的に口に出し、打ち、書いてみる。それをここでは「発語の成熟」と呼びたいと思います。
そうしたきちんと成熟した発語は、繰り返される度に人生という現実にしっかりと根を張っていき、やがて立派な大樹となってあなたを守ってくれます。さながら、一冊の書物のように。今週は、できるだけ等身大の自分に馴染む言葉を見つけてみてください。
今週のキーワード
自分を表すような言葉を