おうし座
歩行とリズム
さりげない連続性
今週のおうし座は、荒川洋治の「見附のみどりに」という詩のごとし。あるいは、日常に隠れたリズムの中にこころの平穏を見出していくような星回り。
すぐれた詩の特徴はその「連続性」にあり、ただ言葉のパンチが強ければいいとか、物語が奇抜でなければならないということはなく、むしろ何がいいのか分からない程度にそれらが隠れている、さりげなさこそが大切になってくる。
それを強く感じさせるのが例えば「見附のみどりに」という作品であり、ここでその冒頭部分を引用したい。
「まなざし青くひくく 江戸は改代町への みどりをすぎる
はるの見附 個々のみどりよ 朝だから
深くは追わぬ ただ 草は高くでゆれている」
自分がある場所を通ったときの風景を、ただ淡々と描いているのだけれど、そのテンポが独特で、特別かつての戦争の時代や不幸や災難などとの比較を持ち込まずとも、まるで言葉の流れそのものの中に平和が宿っているように感じられてくる。
8日におうし座から数えて「自分なりの美学」を意味する、6番目のてんびん座で満月が起きていく今週のあなたもまた、ことさらに自己主張するのとは違う形で、自分なりの流儀を貫いていくことになっていくだろう。
歩く速度を落とす
昔の人はとにかくよく歩いたと言います。個人的にも、子供の頃に親戚のおばさんの家へ遊びに行った際、ちょっとそこまで花火を見に行こうと言われ気軽な気持ちで付いていったら、なんだかんだと二つの山を越えさせられて、花火を見る頃にはすっかりくたくたになってしまった思い出があります。
おそらく、地図の上で考えれば、実際そんなに大した距離ではありませんでした。ただ、子供の頃の自分にとってはとてつもない旅であり、山を越えるたびに世界がどんどん変わっていったのをよく覚えています。それはおそらく、場所から場所への距離感は同じでも、高速移動やハイスピードに慣れ、電車やバスや自動車の速度で物事を感じたり考えたりするのが当たり前になってしまった現代人には見えてこない風景なのでしょう。
今週は、徒歩には徒歩なりの思考があるということを、どうか思い出してみて下さい。そして普段よりもゆっくりと思考の流れや連続性を感じてみることで、「迅速性」や「効率」といった都市的な価値観からこぼれ落ちていたものが実感されてくるはずです。
今週のキーワード
歩く姿勢の美しさ