おうし座
悪や闇に差し込む美
夜の闇にたたずむ女性
今週のおうし座は、歌川広重の「真乳山山谷堀夜景」に描かれた夜の闇にたたずむ女性のごとし。あるいは、みずからに「翳り」という魅力を施していくような星回り。
真乳山(まちつやま)とは隅田川の近くの小山のこと。舟で来た遊客はここから徒歩か駕篭で吉原へ向かったそうで、描かれた芸者は広重がひいきにしていた実在の人物なのだとか。
昼は人の意識を外界に向かわせるのに対して、夜は人の意識をその内奥へと向かわせる。その意味で、「夜の闇にたたずむ女性」というモチーフも暗闇が生み出す奥行きが、その女性の美をさらに内奥へと誘い込むように感じられてくる。
谷崎潤一郎が『陰翳礼賛』でいうように、日本人は白日の明るい世界よりほの暗きものにより一層魅力を感じてきたが、それは人間描写においてはその人間の負の側面をいかに滲ませるかという形で現われてくるものなのかも知れない。
というのも、美とはつねに悪を正や善に反転させる瞬間を狙っているものであり、明るい現在が暗い過去や理解しえぬ不可解と結びついてこそ、「翳り」という魅力が生じてくるから。
3月22日に試練と課題の星である土星が、おうし座から数えて「社会的到達点」を意味する10番目のみずがめ座に入っていく今週のあなたもまた、生まれてから今まで準備し、積み重ねてきた経験の成果をいよいよ表沙汰へと転換していく時期に入っていきそうだ。
孤独の中に溶け込む
人は、不可解で残酷な事件が起こると、すぐに「うかがい知れぬ心の闇」と言って終わりにしてしまうけれど(それでまたキラキラとした光景に目を向けなおす)、今のあなたにはそうした闇をとぼとぼとひとり歩き続けていく覚悟はあるだろうか。
誰かのために人を殺すにしろ、逆に自分を殺すにしろ、人間は日々いろんなことを考えながら生きているもの。しかしその多くは、本当の考えを考えないためのものであって、そういう安全に生きていくための明かりやキラキラをあえて無視して、闇の中を歩ききったとき、なぜだかおかしくなっていた心や体が治っていたりすることがある。
自分の孤独だけは特別だと思い込んで、そこに囚われると、人はアッという間に自壊していく。ただし孤独の中に溶け込んで、取り入れていく人はいつの間にか回復していたりする。そういう回復の道は、いつだって真っ暗闇で、そんな道を行こうとすると、世間からは気が狂っているなどと言われる。でも、それでいいのだ。
今週のキーワード
バカボンのパパ