おうし座
ぱっかりさっぱり
ぱっかり割れた石のように
今週のおうし座は、石の卵から生まれた孫悟空のごとし。あるいは、古い殻をまた一つ打ち破っていくような星回り。
誰しも、自分が居心地よく感じている自分の縄張りに慣れてしまうと、そこから出ていくことを考えるだけで怖くなり、訳が分からなくなってアンデンティティの危機に陥るもの。
その気が特に強いおうし座の人たちにとっても、人生は本質的に変化の連続であるということは時おり思い出していかなければなりません。
例えば、16世紀の中国・明朝の隠遁詩人、呉承恩が書いたとされる『西遊記』は、ひとつの石から話が始まります。天地開闢のとき以来、その石は天界の陽光と月光を吸収してきましたが、その石がいよいよ身ごもって石の卵を産み落とし、そこから生まれてきたのが孫悟空でした。
力自慢の不遜なサルだった孫悟空は大胆にも不老不死の仙人に弟子入りし、その適応力と気まぐれな創造力で天上界の大きな脅威となったため、釈迦は彼に自分の分を弁えることを教えようと500年間、山のなかに閉じ込めました。
ただ最終的に孫悟空は変化を遂げて、新しい役割を引き受け、若い僧侶の取経の旅を助けるに至った訳ですが、こうした彼の目まぐるしい変転の人生が、有史以来一度も動いたことのない山頂の巨石から始まったことをここで改めて思い出してほしい。
おうし座の反対側に位置するさそり座へ太陽が移っていく今週は、変化のない生活に安住することをやめ、新しい作り出す喜びを味わうきっかけが舞い込んできやすいはず。
自分もまた孫悟空のように、きっとまだまだ身に着けるべき知恵があり、助けるべき巡礼者がいて、治めるべきまだ見ぬ王国があるかも知れない。そんな思いに、ふと駆られることもあるかも知れません。
『東京一年生』のように
竹原ピストルさんの『東京一年生』という曲をご存知でしょうか。
夢を追いかけて東京に出てきた主人公の気持ちをストレートな歌詞とともに歌った曲ですが、おそらく実際に竹原さんが感じたことを歌っているのでしょう。
生きづらい、暮らしづらい、うまく呼吸ができない。そういうことは誰しもが一度ならず感じているはずですが、今のおうし座もまたそれを強く感じている人が多いはず。
歌詞に引き付けるなら、それは「夢があるから」であって、けっして「街のせいじゃない」んです。
「例えば人ごみが息苦しかったなら、まずが自分が消えることだよ。さもなくば、窒息するまで歌いきるんだ」
街に染まって誰かを汚い罠に陥れる側の人間になるのではなく、逆に堅苦しい価値観やガチガチに固められた奴隷根性に風穴をあけて緩めてあげられる側の人間になろうと。
そんな風に、今週はできるだけ自分との戦いから逃げることなく、それでいてぱっかり石でも割るように、さっぱりと過ごしていきたいものです。
今週のキーワード
『西遊記』(呉承恩)