おうし座
自己のメディア化をはかる
老子の「明」
今週のおうし座は、アテネのデルフォイ神殿に刻まれていた言葉のごとし。すなわち、「汝自身を知れ」という言葉を生きた実感をもっておのれに適用させていくような星回り。
この言葉をみずからの標語としたソクラテスは、「知者」とも「詭弁家」とも訳される当時一級の職業知識人であったソフィストに対して激しい批判を向け、その上で自己の「無知」を強調しました。
しかし実は、同時代の老子もそれと似た哲学を持っていました。
例えば、「人を知り、議論するのは「智」。自分の心を照らすのは「明」」であるとして後者を強調しているのですが、これは明らかに「人と語るための言語知識が知者の条件である」という孔子の教えへの批判を含んでいます。
老子が面白いのは、この「明」ということについてさらに「恒を知るを明」(16章)と述べ、永遠とさえ感じられるような悠久とした時間を見つめ、自意識を最小化していくことだとする一方で、「小を見るを明」(52章)と述べ、微細なものを見ていくことが自分を知るということなのだとも言っているところ。
つまり老子は、この宇宙の気の遠くなるような長さや大きさを知りつつも、人間や社会というものが、あくまで小さなことの積み重ねでできていると考えていた訳です。
さて、今週は23日(火)に太陽がしし座に入って輝きやエネルギーが増していく一方で、25日(木)には月がおうし座へ入って客観的な認識や気付きを促す下弦の月を形成していきます。
これは特におうし座のあなたにとって、まさに老子の「明」の文脈で自分自身を知るために内面的な力を使っていくにはもってこいのタイミングとなっていくのではないでしょうか。
待つということ
シャーマンの伝統においても、「微細」ということは大切にされてきました。
古代ギリシャでも、アルタイや日本でも、祭祀において「鈴」という道具が大切にされてきましたが、例えばロシアのシャーマンは腰に鈴をたくさんつけて、音がすることで神さまが来たことが分かるようにしていました。これは「おとずれ」を待っていた訳です。
そして、それに備えて自分の感覚を研ぎ澄まし、気持ちや思考もいつ何かが訪れてもいいように、つねに臨界値にしておいたのです。
界に臨んで、いろいろなものがやって来るのを、熟練した猟師のようにひたすら待つことに集中していく。
これは書いてしまえば簡単ですが、自分自身もメディアであることを忘れてしまった現代人にとってはかなり難しいことかもしれません。
ただ、中世の日本人であれば誰でもできたことです。櫛を鳴らして自分をひとつの受信機にし、あるいは己を無にして、耳を研ぎ澄ましましょう。
今週のキーワード
「汝自身を知れ」