おうし座
虚実を開いて
透明感のある時間帯
今週のおうし座は、「夕月に七月の蝶のぼりけり」(原石鼎)という句という句のごとし。あるいは、"実”の隙間に開けた"虚”に目を開いていくような星回り。
夕暮れどきの紫色の空に白い月がかかって、そこに一羽の蝶がのぼっていった。
普通、蝶は多少の抑揚を持ちながらも水平に飛んでまわっていくものですが、垂直方向に空へとのぼっていく光景は、どこか宗教画のような趣きさえあります。
生きるという営みは虚と実の織りなしから出来ており、これは呼吸でいうからだを弛緩させる働きとしての呼気と、緊張させる働きとしての吸気にも対応させることができますが、一日の折り返しである夕暮れ時もまた虚の時間と言えます。
そしてすでに月が出ているにも関わらず、そこに向かってのぼる蝶がありありと見える夏野夕暮れというのは、それだけの透明感のある特別なタイミングなのでしょう。
そんな瞬間を捉えた掲句は、作者が亡くなる前年つまり最晩年に詠まれた一句であり、さりげない描写ながら、どこか日常から脱け出して月へ帰っていこうとする憧れが思いがけない形で現れたもののように感じられます。
17日におうし座から数えて9番目のやぎ座で満月を迎えていく今週は、あなたにもまたそうした憧れがどこか力の抜けた形で湧き出てくるはずです。
発見する営みとしての芸術
それが特定の人間であれ、芸術作品であれ、存在しているだけで、なぜだかありがたい。そう思わせるものには、あなたの魂の片割れが潜んでいます。
例えば、そういうものにお金を払うという行為は、単に消費や浪費や経済的合理性ということを超えて、もっと「自分自身」を感じたいという衝動から発していますし、そうした感覚はあなたが「自分は誰と付き合っていくべきか?」という問題を考える際にも、大変重要なヒントを提供してくれるはず。
自分を知らず、自分に鈍感な人というのは、しばしば他人と付き合うということの根幹もまた見誤ってしまうものですが、仮に芸術を「発見する営み」だとすれば、その目的語に当たるのは常に自分自身ですし、自分を発見するのが上手になればなるほど、付き合うべき相手もまた自然に分かってくるもの。
その意味で、"実”を許容してくれる"虚”というのは、自分の理想的なパートナー像とも言えるかも知れません。
今週のキーワード
"ソウルメイト”とは何か