おうし座
道行く人になりにけり
レッツゴー・チマタ
今週のおうし座は、開かれた通路において「交通」していくような星回り。あるいは、開かれた場に進んで立っていくことで、異質なる他者との交換/交歓を果たしていくこと。
民俗学者の赤坂憲雄によれば、あらゆる「交通」はその始源において、「共同体の尽きはてるところ」に、それぞれの共同体がほかの共同体ないしその成員たちと接する地点に、自然とめばえてきました。
つまり、共同体の内部にではなく、お互いに見知らぬ他者である共同体と共同体とが相接する境界領域で生起し、そこでのみ発達してきたのです。
そしてこうした「交通」の生起と発達を、個人レベルで経験しようとしているのが、今のあなたなのだと言えるのではないでしょうか。
日本では古来、そうした異質な他者やコミュニティに開かれた場所は「チマタ(道-股)」と呼ばれてきましたが、チマタは物と物とが交換される市場であり、また歌垣という男/女の性的な交歓の場でもあり、それが「交通」の光景だったのです。
今週のあなたもまた、いつの間にかそんな交通を目にし、ときに参加する「道行く人」となっている自分に気付いていくことでしょう。
旅路は風の通り道
風は目に見えず、突如としてあらぬ方向から吹いてくるし、強くなっては凪ぎ、すぐに方向を変え、予測や予断を許しませんが、古代ギリシア語ではそんな風のことをプネウマと呼んでいました。普遍的な実体としての「霊」のことです。
そして西洋哲学では、そんな風や霊がよどんで情念として沈殿した状態が、個別的な魂(プシュケー)であり、自分が自分であることの中核なのだと考えてきました。
そこでは、確固とした自分を持つことだとか、どんな風にもびくともしない堅牢な教会のごとき業績を残すことが、崩れにくい「優れた個人」の見本とされてきた訳です。
そういう意味で、今週はそういう価値観とは別の、もっとゆらめいたり、しなったりしてどこかへ流れていってしまうような、霊の視点に立って自分をシフトさせていくことがテーマなのだと言えるかもしれません。
今週のキーワード
プネウマとプシュケー