さそり座
成熟と直視
目をすわらせる
今週のさそり座は、「秋刀魚焼かるおのれよる垂るあぶらもて」(木下夕爾)という句のごとし。あるいは、人生の成熟期に差し掛かってきたことを、直感的に自覚していくような星回り。
たいてい「秋刀魚(さんま)」と言うと、煙がもくもくと立ち込めるとか、食欲をそそる匂いだとか、当の秋刀魚そのものには目を向けずに詠まれることが多い。これは身を焼かれることに生々しい描写を加えることを、本能がどこかで避けているのかもしれない。
だが掲句では、見なかったことにするのではなく、焼かれている秋刀魚がみずからの「あぶら」によって焼かれているという現実を直視している。まるで身から出た錆を自覚せよ言わんばかりに。
ここのところのあなたもまた、現在の自分の立ち位置だとか、ありのままの現実について直視せざるを得ない状況を迎えているのでしょう。今週は、比較的冷静にそれを実行していくことができるはず。
目を泳がせて済まされてきた未熟の時代はもう終わったのです。
臆病さを知る
日本の戦国時代の武将に、山中鹿之助(やまなかしかのすけ)という人物がいます。
毛利氏に滅ぼされた山陰地方の戦国大名・尼子氏の遺臣で、彼は月と交信できる能力を持っていたことで有名ですが、そんな鹿之助には、若武者が将来勇敢な武士になれるかどうか判断した逸話も残っています。
初陣を終えた2人が鹿之助にそれぞれ話しかける。ひとりは「敵に向かうと震えが生じて、しっかり敵を見ることもできず、後はよく覚えていません」と話した。別のひとりは「自分は敵がどんな鎧を着ていたか、どんな馬に乗っていたかなど、鮮明に覚えています」と話した。
果たして鹿之助は、「最初の若者はいずれ立派で勇敢な武士になれるだろう。後の若者ははなはだ心もとない。次の戦で討たれてしまうかもしれない」と言い、そのとおりとなったそう。
戦いの場において、臆病さを知る者は強いのです。今週のあなたはどちらの若者となるでしょうか。
今週のキーワード
山中鹿之助