さそり座
愉しみと反復
愉しみを欠いている限り
今週のさそり座は、アリストテレスにおける「愉しみ」のごとし。あるいは、取り組む活動であれ、働かせる能力であれ、干からびていた愉しみを再び満たしていくような星回り。
アリストテレスと言えば、今日の科学技術を生み出した西洋文明の根幹を支える哲学的な基礎付けを行った人物であり、しばしば権威と生真面目の象徴としての役割をつねに与えられてきましたが、いま改めて読み直してみるとかえって新鮮な発見が少なくありません。
例えば、『ニコマコス倫理学』の中でアリストテレスは「生きるとは活動であり、各人はそのもっとも好む事柄に対して、もっとも好む能力を働かせて活動する。これらの活動の愉しみが活動を完成させ、各人の追求する生を完成させるのだ」と言い切った上で、次のようにも言います。
愉しみを感じつつ活動する人の方が何事についてもその事柄をよりよく判断し、より正確に成就することができる。音楽家であれ建築家であれ、各自の仕事に悦びを感じつつやっていればこそ、仕事についての進歩もあるのだ。このように、愉しみこそが活動を増進させうる、と。
これは逆に言えば、<愉しみ>を欠いている限り、どんな分野であれ、その仕事は永遠に完成しないということになるのではないでしょうか。
10月11日にさそり座から数えて「あそび」を意味する3番目のやぎ座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、たとえ一見すれば悲劇的で、笑える状況ではなかったとしても、どうしたら楽しめるのかを少しでも考えていきたいところです。
感情の「ハビトゥス」を培う
ハビトゥスとは、態度、外観、装い、様子、性質などを意味するラテン語で、端的に「習慣」と訳されることが多い言葉ですが、もともとの意味に忠実に定義すれば「おのれを持する能力」のことです。
そして悦びであれ罪悪感であれ、私たちが抱く感情もまた「ハビトゥス」の一つであり、その持ち方や抱き方こそが今週のあなたにとって大切なテーマとなってくるでしょう。
例えば、愛情や優しさ、義理人情といったものは、ともすれば本人の先天的な性質に由来するものと考えられがちですが、まだ愛情にもならない思いの萌芽が何度も経験されることで強化されたり、それを発揮しやすい環境や相手を得て、練習ないし反復されていくことで初めて身についていくのだと言えます。
ほんの些細な愛情や優しさを前にした時、「愛が足りない」と不満に思ったり相手を非難してしまう人もいれば、それを拾い集めて「おのれを持する」ことで満ち足りる人もいるのは、どれだけの反復と練習を積み重ねてきたかの違いなのです。
おのれを持することは決して簡単ではありません。しかし、今のあなたならばそれができるはず。今週のさそり座は、未来の苦しみを減らすためにも、些細なきっかけをこそ大切にしていくべし。
さそり座の今週のキーワード
日々愉しみを積み重ねていく