さそり座
小さな主語を超えていけ
「情報の秩序」の一部として
今週のさそり座は、「負のエントロピーを食べる系」としての一生命体のごとし。あるいは、自分はいま誰とどんな連動をしているのか、そしてそれがいかなる秩序を生み出さんとしているか、改めて確認していこうとしていくような星回り。
この宇宙はエントロピーというのをもっていて、それは時間が経てばたつほど増大していくという法則の中にあります。エントロピーとは何かと言うと、無秩序性であり、デタラメさ加減のことで、宇宙はゆっくりと無秩序に向かっている訳です(これを熱力学的には「熱死」という)。
ところが、原始地球のあるとき、エントロピーを増大させないで、むしろ減少させるような系が誕生し、これをシュレーディンガーという人が、「負のエントロピーを食べる系」と呼んだのです。これが秩序を生成するものとしての「生命」のことですね。
生命は、その個体自体は死を避けることはできないけれど、地球環境がよほど激変しない限り、遺伝子そのものは生き続けるだろうと言われています。つまり、情報が生き続ける。生命のつくりだす秩序というのは「情報の秩序」であって、その意味で「生命」ってプログラムなんですよ。そして、それはいつだって個人のような小さな主語を超えたところで動いている。
つまり、ともするとデタラメでばらばらになってしまいがちな生活や人生を反転させて、新たに秩序が生み出されていく時というのも、それは個人の頑張りによって為されるということはまずなくて、あくまで分散的につながっている他の生命プログラムとの連動によって浮かび上がってくる「情報の秩序」が結果的にそうさせているんです。
26日に自分自身の星座であるさそり座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分がいまどんな「情報の秩序」の一部として存在しているのか、改めて意識してみるといいでしょう。
クレーの「フォルムング(形成)」
古代ギリシャのアルキメデスは、シチリア島シラクサの王から王冠の純度を調べるように命じられその方法に悩んでいたとき、風呂に入っていて、水があふれるとともに自分の体が軽くなることに気付いて、いわゆる「アルキメデスの原理」を発見し、王冠に銀が混じっているのを見抜いたと言います。
こうしたふとした気付き(インスピレーション)の到来は、いつだって精神の動きの中で起こるものですが、逆に言えば私たちはそのラクさゆえに、どうしても動きを止めてから思考を開始するのを当たり前のことだとつい思い込みがちです。
この点について例えば、20世紀前半当時、ヨーロッパ最先端のアートスクールであったバウハウスで教鞭をとっていたパウル・クレーは授業原稿の中で次のように述べています。
現象としてのフォルム(形態)は、邪悪で危険な亡霊である。善良なのは、動き、行為としてのフォルムであり、活動しているフォルムである。このフォルムとはフォルムングのことである。悪いのは、現象としてのフォルムである。つまりそのフォルムは、終焉であり、死である。フォルムングとは、動きであり、行為である。フォルムングは、生である。(『無限の造形・下』)
その意味で、今週のさそり座もまた、亡霊としてフォルム(残像)を置き去りにするべく、自身の内側から湧き出してくるフォルムングに身を任せていきたいところです。
さそり座の今週のキーワード
動きであり、行為であり、生命であるために