さそり座
苦い汁をすする
つるっとした起伏のない顔とゴツゴツとして陰翳の深い顔
今週のさそり座は、「昭和」という記号のごとし。あるいは、いつの間にか現代人の身の内深くまで食い込んでいる「スマートさ」をふるい落としていこうとするような星回り。
デジタル化が進んだ現代では、出会いも恋愛もアプリのワンタッチで始められるどころか、2次元世界のキャラクターに本気で恋をすることも可能になりました。
誰もがそうした便利さやスマートさをよしとしているかと言えばそうではないはず。特に、人と人との繋がりの濃密さを追い求めずにはいられないさそり座にとっては。
例えば、今よりだいぶ不便であったがゆえに、昭和の時代はずっと手間暇をかけていたものでした。しかしそうして悶々としたり、焦らされるプロセスこそが、「昭和」という時代を特別に色濃く、生々しい世界にしていたのかも知れません。
だからこそ、欲しいものを手に入れる喜びの強度を求める人ほど、「昭和」という記号にある種のロマンを抱いたり、そこに漂うノスタルジックな汗臭さをすすんで纏っていったりしようとするのではないでしょうか。
10日にさそり座から数えて「自分なりの流儀」を意味する6番目のおひつじ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、ここぞというタイミングであえて時代錯誤なアプローチを取っていくべし。
快楽か、人間か
「昭和」という記号について考えていく上で、やはり無視できない作品の一つに、1946年に発表された坂口安吾『堕落論』があります。そこには「空虚」ということを突き詰めて言及した次のような一節があります。
あの偉大な破壊の下では、運命はあったが、堕落はなかった。無心であったが、充満していた。猛火をくぐって逃げのびてきた人達は、燃えかけている家のそばに群がって寒さの煖をとっており、同じ火に必死に消火につとめている人々から一尺離れているだけで全然別の世界にいるのであった。
そしてさらにこう続けるのです。
偉大な破壊、その驚くべき愛情。偉大な運命、その驚くべき愛情。それに比べれば、敗戦の表情はただの堕落にすぎない。だが、堕落ということの驚くべき平凡さや平凡な当然さに比べると、あのすさまじい偉大な破壊の愛情や運命に従順な人間達の美しさも、泡沫のような虚しい幻影にすぎないという気持がする。
ここでいう「堕落」とは、何も考えずに欲望にひた走る快楽主義の末路のことではなく、むしろその否定であり、彼は「苦しむことが、人間であること」であると信じていたのだろうと思います。さて、翻って今の自分なら、どんな「平凡な当然さ」を徹底していくべきか。今週のさそり座は、そんなことをこそみずからに問うてみてください。
さそり座の今週のキーワード
まずい!もう一杯!!