さそり座
関わりの当たり前を打ち崩す
人間とは何か
今週のさそり座は、『聖なるズー』の投げかける問いのごとし。あるいは、新しい事態を前にどう振る舞えばいいのか、創造的に迷っていこうとするような星回り。
犬や馬などを対等なパートナーとして性的営みを行う「ズー」と呼ばれる動物性愛者たちを取材した濱野ちひろの『聖なるズー』は、特にその性の側面に着目して、彼らズーを次のように言い表しています。
ズーとは、自分とは異なる存在たちと対等であるために日々を費やす人々だ。ズーたちは詩的な感覚を持っているのかもしれないと、私は思う。動物たちからの、言葉ではない呼びかけに応じながら、感覚を研ぎ澄ます。そして、自分との間にだけ見つかる特別ななしるしを手がかりに、彼らはパートナーとの関係を紡いでいく。
本書が説くように人間と動物とのあいだにもし特別な交感の可能性が開かれているのだとすれば、その事実は、著者が言うように「セックスとは何かという問いだけではなく、人間とは何かという問いでもある」ように思います。
そうして、ここでズーたちの存在は、既存の『鉄腕アトム』や『ドラえもん』が無意識のうちに浸透させた、人間以外のものとのパートナーシップを当たり前のものとする感性と相まって、果たして私たちは日ごろから本当に人間同士で対等なパートナーシップを築けているのか、むしろ人間以外とのさまざまな関係性を取り入れ、助けられることでようやく人間は社会的関係を成立させることできているのではないか、といった根源的な問いを投げかけにいたるのです。
その意味で、6月21日にさそり座から数えて「探求」を意味する9番目のかに座に太陽が入る夏至を迎えていく今週のあなたもまた、さまざまな差別やハラスメントが横行する現代社会のさなかで、自分がどのような関係性に開かれ、生かされているのか、改めて問うてみるべし。
水平的な関係性の探求
生物学者の福岡伸一は、ウィルスが人間にもたらす「水平性」について度々言及しています。
長い進化の過程で、遺伝する情報は親から子へ垂直方向にしか伝わらないが、ウイルスは遺伝子を水平に運ぶという有用性があるからこそ、今も存在している。その中のごく一部が病気をもたらす訳で、長い目で見ると、人間に免疫を与えてきました。ウイルスとは共に進化し合う関係にあるのです。(毎日新聞、2020年6月15日付け)
そもそも、ウイルスの歴史というのは意外と新しく、「高等生物が登場したあと、はじめてウイルスは現れた」のであり、それも「高等生物の遺伝子の一部が、外部に飛び出したものとして、つまり、ウイルスはもともと私たちのものだった。それが家出し、また、どこかから流れてきた家出人を宿主は優しく迎え入れている」に過ぎないと言うのです。
なぜそんなことをするのかと言うと、それは「ウイルスこそが進化を加速してくれるから」であり、こうして「遺伝子情報の水平移動は生命系全体の利他的なツールとして、情報の交換と包摂に役立っていった」のだと述べています。
今週のさそり座もまた、これまでにあまり取り組んだことのない「他者との関わり方」と真剣に向き合っていくことになるかも知れません。
さそり座の今週のキーワード
さまざまな情報の交換と包摂のための試み