さそり座
みずからを編み込んでいく先
神輿と連帯
今週のさそり座は、お祭りで力強い掛け声とともに担がれる「神輿」のごとし。あるいは、個人の枠を超えてひとつの力のうねりへと加わっていこうとするような星回り。
最近、外国人観光客向けに神輿のことを「持ち運び可能な神社」と説明することが多いそうですが、実際にはお祭りにおいて神輿は激しく振り動かされ、こうした所作の方に本質があるのではないかと思わざるを得ません。これは神の霊威を高め、豊作や大漁を願って、その効力を余すところなく周囲に行き渡らせるための所作とされていますが、神はもともと祟り(天変地異)を起こすとも考えられていましたから、神輿を振り動かす所作はそうした祟りから町を守り鎮める意図も込められていたのでしょう。
ただ、その担ぎ方や掛け声や運行の仕方などは地域によってさまざまで、そのひとつひとつがそれぞれの土地の人々のルーツを凝縮させたものであると考えると、祭りというのはグローバル化が進む中でも氏族や部族の多様性を目にする貴重な機会とも言えます。
最初は呼吸を合わせるためのちょっとした掛け声だったものに、だんだんと記憶や感情が乗せられ、畳みかけるように何度も執拗に繰り返されていくなかで、リズムをはらみ、そうしていくうちにちっぽけな個人という枠組みを超えて大きなひとつの力のうねりとなり、そのうねりが広がっていく時、秘められていたパワーが何倍にも増幅されていくのです。
その意味で、5月9日にさそり座から数えて「共同体の原理」を意味する10番目の星座であるしし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、できるだけ自身のルーツから発した「うねり」の一部に加わっていきたいところです。
キルティング・ビーと拠り所
神輿というとどうしても男のものというイメージが強いですが、一方で古代から糸紡ぎや縫い物、手芸、機織りなどはどの地域でも女性の手仕事として連綿と受け継がれ、勤労のモラルとも結びつけられてきました。
例えば、19世紀前半に書かれた『西洋事物起源』には、「(編み物は)会話を妨げず、気を散らせることもなく、空想にふけりながら仕事をすることもできる」と書かれており、従来戒められてきた「おしゃべり」や「空想」が手仕事に付き物であると指摘されているばかりか、容認されていることが分かります。
実際、手仕事は女性同士が集まっておしゃべりしながら行うのに都合がよく、とりわけアメリカの開拓地で行われきた「キルティング・ビー」は女性同士の絆を深める貴重な場でもありました。
キルトはそれぞれが持ち寄った端切れをみんなで一針一針縫い合わせ、時にはそこに著名やメッセージを入れて作られるのですが、それはまさにひとりひとりの思いをつなぎ合わせることであり、そうして作られたフレンドシップは新生活に踏み出した女性たちにとって、その実用性以上に大切な精神の拠り所として機能していたのではないでしょうか。
その意味で、今週のさそり座もまた、そうした精神の拠り所としてのフレンドシップをどうしたら編み上げていけるかということが問われていくことになりそうです。
さそり座の今週のキーワード
ほころびを編みなおす