さそり座
必然性をほどいていく
偶然の産物
今週のさそり座は、『くすぐったいぞ円空仏に子猫の手』(加藤楸邨)という句のごとし。あるいは、何気ない偶然によって救ったり救われたりしていくような星回り。
江戸時代初期にみずから「諸国を歩きながら12万体の仏像を刻もう」という誓願を立て、30年以上にもわたって旅する仏師として活躍した円空は、鉈で彫った自由で荒削りな仏像を数多く残しました。
掲句では、その朴訥としていながらもどこか飄々とした「円空仏」に、ひょいと子猫がじゃれついた。その瞬間、それまでどこか素っ気なかった木彫りの仏像が、くすぐったそうな顔をしたというのです。
いわば、人間のように余計なことは何も考えていない無心の猫の手を借りることで、ダルマに目を入れるかのごとく、仏像に入魂の一瞬を見て取った句であり、「くすぐったいぞ」という俗っぽい言葉が、絶妙なおかしみと無垢な精神を体現しているようで、掲句をとびぬけて面白い句に仕立てています。
生死のはざまにあるこの世の苦しみを救ってくれるのも、おそらく大上段からの説かれたありがたく高尚な教えより、こうした何気なく生まれる偶然の産物であり、それを柔らかく感じ取り、静かに受け止めていけるだけの感受性の在りようなのかも知れません。
4月9日にさそり座から数えて「宗教性」を意味する9番目のかに座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、何より自分を無垢な詩心に近づけてくれるものを追求してみるといいでしょう。
美的であるために
人生はさまざまな「もののはずみ」や「たまたま」、そして「ふと」や「ふいに」によって左右されており、そのことを私たちは時に「一寸先は闇」と言ってみたり、「青天の霹靂」と言ってみたりして、その都度一喜一憂していきます。
ただ、そうして生まれてから死ぬまでたくさんの偶然にさらされ続け、多くの重要な選択を余儀なくされていくにも関わらず、偶然に活を入れる秘訣や方法論について、なぜか学校ではほとんど教えてくれません。
例えば、「初対面の人にまずどんな言葉をかけようか」といった場面なら、自分がどんな選択肢を持っており、そこへその場の状況がもたらす偶然が組み合わさることで、言葉や行動の結びつきがどう変化していくのかをまず意識してみてください。
<美的>であるということは、進化の袋小路や行き詰まりから離脱するということであり、それは何よりもまず普段から何気なく選択している言動の結びつきやパターンに鈍感にならないよう、気を付けることによって培われていくのです。今週のさそり座は、そんな自身の凝り固まりがちな結びつきをほどいていくことを意識してみるといいでしょう。
さそり座の今週のキーワード
破調を取り入れる