さそり座
僕たちは手を引かれ、支えられて生きている
死者との共同体
今週のさそり座は、「冬空に吊して秋刀魚五千匹」(阪ひとし)という句のごとし。あるいは、何に/誰に支えられて在るのかを直接的に実感していくような星回り。
秋刀魚(さんま)は新鮮なものを塩焼きにして食べるのがいちばんですが、一夜干しにして食べるのもなかなかうまい。
この句は作者の故郷である熊野あたりの漁港の冬景色を詠ったものなのでしょう。それにしたって、五千匹という数は凄まじい。海の豊穣を讃えるのには十分過ぎるくらいですが、むしろそのあまりの数の多さは冬空とあいまって濃厚な死の気配さえ醸し出しているように感じます。
現代では、こうした自分たち人間の生活がどれほどの犠牲の上に成り立っているのかを直接的に実感する機会はすっかりなくなってしまいましたが、だからこそ作者はあえてこうした句を詠んでみせたのかも知れません。
いったんそう考え始めると、掲句の秋刀魚もまた次第にただの食料ではなくなっていき、生者の傍らにある「死者の共同体」のようにも感じられてきます。
27日にさそり座から数えて「ネットワーク」を意味する11番目の星座であるおとめ座で下弦の月(気付きと解放)を迎えていく今週のあなたもまた、自分が思いがけないネットワークの一部であることに改めて気付かされていくことでしょう。
手に余る代物に
自然はその圧倒的な力で人間を脅かしもすれば、その大いなるふところで人間を養いもすれば、寄り添い、包みこんでくれます。どちらが素顔で、どちらが表の顔なのかということは、人間の都合だけで決めることはできませんし、いずれにせよ人間はその両方の顔とともに、自然の中で生きていくしかないのです。
それでも掲句を詠んだ作者の胸中には、人間を養い、包み込んでくれるものとしての自然が秋刀魚の大群になり代わって、その顔をこちらに向けているようにも感じます。今日まで自分が無事に生き延びてこれたことを、祝福してくれているかのように。
ともすると現代人は、自然というものを保護の対象として自分より下に見てしまいがちですが、本来どうしたって人間の手に余る代物なのだということがここで思い出されます。
そして、みずからの手に余るものというのは、自然の他にも、案外身近なところに何気なく転がっているものです。その意味で、今週のさそり座もまた、作者のように自分の手を引いてくれる存在やその手ごたえを何とはなしに掴んでいくことができるかも知れません。
さそり座の今週のキーワード
先祖を大切に