さそり座
平凡を積み上げた先の非凡
こちらは8月16日週の占いです。8月23日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
魅力とは絶妙な間合いにこそ宿るもの
今週のさそり座は、「昼までに少し間のある秋の風」(名取文子)という句のごとし。あるいは、平凡の隣りで非凡に遊んでいくような星回り。
掲句の大事なところは、「秋の風」へのたっぷりとした間合いにあります。もとより、秋は一日一日と日が短くなっていく季節。何やら心急く思いに駆られやすい時期でもありますが、身近な仕事が一区切りついた午前。ほっとひと息ついて、何気なく窓から外を見る、というのが句意。
この「少し間のある」という言い方は、いたって平凡な表現ではありますが、この場合はそれがなんとも絶妙なところに置かれていて、その間合いに作者の言外の思いやたたずまいが見事に表現されているように感じます。秋風とは、いわばそんな時のこころに立つ、さざなみのような姿でもあるのでしょう。
斬新な素材や感覚を駆使して読むものを瞠目させるのも俳句の醍醐味かも知れませんが、こうした句に触れると平凡に隣接しつつ、薄紙一枚隔てて非凡な感受を一作に収めるのも俳句のたのしさなのだということがよくわかるのではないでしょうか。
16日に自分自身の星座であるさそり座で上弦の月を迎えていくあなたもまた、なんでもないようなところで、絶妙に周囲を引き込んでしまうところが出てくるかも知れません。
名前のついていない仕事
ところで、午前まで少し間のあるタイミングで終わるような身近な仕事とは、いったいどんな仕事だったのか。おそらくちょっとした家事労働や、2~3時間で終わるような細切れの仕事など、適切な報酬のもとで売買されていない生産行為だったはず。
こうしたまだ名前のついていない仕事は、得てして市場経済では過小評価されがちです。しかし、実際には日常のいろどりを豊かにしてくれるような、人間が人間らしい生活を成り立たせていくために必要不可欠なサブシステムの役割を果たしていることも多いにも関わらず、そうした「縁の下の力持ち」が、誰からも顧みられることなく老朽化し、放置され、おろそかにされていった結果、全体が立ちゆかなくなるというかなしいプロセスはこれまでも多くの社会が経験してきたはずです。
そして「非凡に遊ぶ」ということもまた、ただ自分勝手に消費し尽くすというのではなく、そうしたリスクにきちんと目を向けて、まずは平凡さの中に埋もれた名前のない仕事をひとつひとつ大事にしていくなかで、初めて可能になってくるのではないでしょうか。
今週のさそり座は、日ごろから自分がどんな「名前のついていない仕事」を積み上げているのかということを、改めて突きつけられていくのだとも言えます。
さそり座の今週のキーワード
シャドウ・ワーク