さそり座
日常三昧
こちらは7月19日週の占いです。7月26日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
蚊帳と生活と私
今週のさそり座は、「怒り妻蚊帳(かや)に大波立てて出し」(桜井土音)という句のごとし。あるいは、流行に乗っていくよりも心の深い味わいへと降りていくような星回り。
大正時代の人で、農家としての仕事の傍ら、その日常などを題材に句を詠んだことから「土の俳人」と称された人。もちろん、ただ土の句を詠ったばかりでなく、掲句のように実に味のある句も詠んでいる。
まず「怒り妻」という出だしがいい。蚊帳の中の妻を愛するというのではないところが、なんとも痛快である。枕を並べて交わした睦み言のなかで、言ってはならない一言をつい漏らしてしまったのか、ひとり残された作者はこの時どんな表情を浮べていたのだろうか。
それは蚊帳の暗がりの中で不確かなままだが、一つだけはっきりしていることは、作者の胸の内では「なぜ」と相手を責める気持ちよりも、ここまで相手を怒らせてしまった自分の愚かさを情けなく思う気持ちの方が優っていたのだろうということ。
こういう句を読むと、表面に出て華やかに活躍し、時代を風靡している作家と、本当の俳句だけから見たらどちらが立派なのか、ということをつい考えてしまう。
24日にさそり座から数えて「内面世界の奥行き」を意味する4番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、たとえ地味であったとしても生活の中にある自分なりのドラマを丁寧に掘り下げていきたいところ。
金子みすゞにおける「私」の置き方
ここで思い出されてくるのが、金子みすゞの『私と小鳥と鈴と』という詩のこと。
私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面を速く走れない。
私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のように、
たくさんな唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。
最後の一文はよく知られたフレーズですが、その一行前には「鈴と、小鳥と、それから私」と書かれています。留意しておかなければならないのは、詩のタイトルや、冒頭の書き出しでは一番最初に持ってきていた「私」が、最後の一文の直前のフレーズでは、「鈴と、小鳥と、それから私」と最後に持ってこられているという点。
私たちもまた、自分なりのドラマを掘り下げていく際には、かくありたいものです。
さそり座の今週のキーワード
「みんな」の中の「わたし」の配列を間違えないこと