さそり座
ブチ、シャリ、シャリ
烏賊に触れて
今週のさそり座は、「烏賊に触るる指先や春行くこころ」(中塚一碧楼)という句のごとし。あるいは、日ごろ劣位な感覚が怪しく蠢いていくような星回り。
やっと巡ってきた春という季節の終わりを惜しむ「春惜しむ」は和歌以来の伝統的な晩春の季語ですが、烏賊の感触との取り合わせがいかにも俳句的で、斬新です。
台所にでも立っているのか、とにかく作者の指先がなまの「烏賊(いか)」に触れ、その弾力や湿り気を感じている時に、ふと春がどこかへ消えつつあるその心へ通じてしまった。
その一方で、音に目をやると六・五・七音で、五・七・五のリズムからはだいぶ外れており、烏賊に触れた時の驚きが予想外に大きかったことが伺えます。
掲句は大正元年の句ですが、現代のように日常に大量の視覚情報が流れ込んでくる以前には、おそらく今よりずっと指先や舌先や肌感で色んなことを感じていたのでしょう。そしてただ感じるだけでなく、感じることで実際に人としての何かが決定的に変わってしまったのかも知れません。
27日に自分自身の星座であるさそり座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、得体の知れない場所へ連れ去られるべく五感を解放させていくことがテーマとなっていくでしょう。
いちごの瞑想
日常生活のあらゆる所作を通して意識の目覚めをもたらす実践にマインドフルネス瞑想がありますが、その簡単な実践法の一つとして「いちごの瞑想」があげられます。これはいちごに対して普段抱いているイメージを一語で構わないのでまず紙に書き出してから、実際にいちごを手に取って口に含み、飲み込むまでの過程を、いつもの何倍もていねいに感じながら食べてみるというもの。
ポイントは、いちごの色つや、口の中に広がる果汁、ぷちぷちっとしたつぶの感触、のみこんだ後に残る後味。それらひとつひとつの出来事を微細に受けとりながら、体験の推移を注意深く見守っていくこと。
そうして「食べる」という行為に全神経を注いでいくとき、味覚だけでなく、耳に入ってくる音や、肌に触れる感触、視界の明度や鼻腔を刺激する匂いなど、他の五感もいつもより鋭敏に情報を拾いはじめ、たった一粒のいちごにさまざまな驚きが隠されていることを実感したとき、普段忘れていた細胞が目覚めていくかのような静かな高揚感が広がっていくのです。
今週は、そうやってからだや心の中のプリミティブでなかなか言葉にできないレイヤーの働きとつながっていくといいでしょう。
今週のキーワード
一瞬一瞬を意識しながら生きる