さそり座
ある錬金術師の肖像
畏敬の念
今週のさそり座は、文豪ゲーテの叡智を記録したエッカーマンのごとし。あるいは、自分にとって特別な相手との結びつきこそが人生の宝なのだということを、改めて感じとっていくような星回り。
後に『エッカーマンとの対話』として文学史上にその名を刻む不朽の人生指南書を書いたエッカーマンが、かねてよりその著書を愛読し、崇拝さえしていた70過ぎの老ゲーテに会いに行った時、彼は29歳の凡庸な新進作家に過ぎませんでした。
ゲーテをしても、初対面の彼に時代を切り開く才を見出すことはできなかった代わりに、みずからの人生の記録係として彼以上の人物はいないと直感し、近くに住まわせまでしてその後10年にわたる親密な交流を築いていきました。
ゲーテは彼にさまざまな教えを注ぎ続けましたが、一流の自然科学の研究者の立場から、自然との向き合い方についても次のように語っていました。
「自然は、つねに真実であり、つねにまじめであり、つねに厳しいものだ。自然はつねに正しく、もし過失や誤謬があるとすれば、犯人は人間だ」
「自然は、生半可な人間を軽蔑し、ただ、力の充実した者、真実で純粋な者だけに服従して、秘密を打ち明ける」
ここには、現代人が失ってしまった畏敬の念というものがどんなものであるか、また何をもたらしてくれるのかが的確に述べられているように思います。そして、エッカーマンにとっては、ゲーテこそが何よりの‟自然”そのものだったはずです。
2月2日(日)にさそり座から数えて「向き合うべきもの」を意味する7番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、会いたい人に会いに行き、向き合うべきものに向き合っていくといいでしょう。
‟キモい”かも知れないけれどもの凄く‟エモい”
どんな分野、どんな相手であれ、そこに没入しきって相手の色がつくということは、程度の差こそあれ「キモくなる」ということです。そして、その程度が増していった先には、やがて自分の「キモさ」を否応なく受け入れざるを得なくなる地点がやってきます。
それは、いつでも言い訳がきく自由を捨てていくということであり、さらに、どう見られたいかで生きるのではなく、欲しているものと一つになって生きるというコースへいよいよ切り替えていくということでもあります。
そうやって旅をしながら、年をとっていく。ときどき、自由になりたいな、って思ったりすることもあるけれど、かといって今さらレールの外へ出れる訳でもなし。
今週は、そんなさそり座的な人生行路の一つの通過地点を迎えていくのだとも言えるかも知れません。
今週のキーワード
ゲーテが亡くなった39歳以降のエッカーマン