さそり座
驚異と復活
宴の供物
今週のさそり座の星回りは、「なべから躍り出る血と肉」のごとし。あるいは、他ならぬ自分自身を驚かせていこうとすること。
紀元前2世紀にイタリア北部に侵入したゲルマン民族のキンブリ族は、ローマ皇帝アウグストゥスに二十個もの大なべを献上したといいます。
というのも、キンブリ族にとって‟なべ”は特別な道具であり、戦いで捕えた相手を、巫女の先導でなべのところへ連れてきては、その喉をナイフでかき切って、血をなべに流し、その流れ方で占いをしたのだそう。
また、なんらかの祭儀が行われる場合、集まった人々は宴を催しますが、宴席の中央には必ず大きななべが置かれ、沸騰する湯の中に獲物が投げ込まれ、その肉が踊るように煮えていくさまを、人々はじっと見つめていました。
彼らは、肉が今にもなべから躍り出てくるように思えたに違いないでしょう。
「なべから踊り出る」ということは、「なにか良い変化が起こって、寿命が延びる(若返る)」のと同意のことと考えられていたのです。その意味で、なべは変容をもたらすものであり、また死と再生をその本質に宿すさそり座の象徴的アイテムでもありました。
22日(日)の冬至に向けての最後の一週間である今週のあなたもまた、そうしたある種の「よみがえり」のためにあなた自身の血と肉を献上していくことになりそうです。
悪にして英雄
「吸血鬼信仰」は、有史以前のバビロニアや中国、インド、ポリネシアからイヌイットまで世界中で人類の記憶深くに刻み込まれてきましたが、中でもブラム・ストーカーが1897年に発表した『吸血鬼ドラキュラ』のドラキュラ伯爵は、一躍スター的存在となっていきました。
その背景にあったのは、社会を侵犯し、人々に死を連想させるナチスや共産主義勢力などへの恐怖を投影する受け皿として、その不気味な佇まいがハマったという社会情勢と、そのモデルとなったツェペシェ公の英雄信仰が重なり、人間を脅かすと同時に魅惑する悪魔的存在のイメージとして統合されていったという流れがあります。
今週のあなたにはどこかでそうした両義的存在にこころ惹かれ、自分自身をも目覚めさせようとする衝動を身の内に感じていくでしょう。
今週のキーワード
悪魔的美