さそり座
夢を現実に引き入れる
やさしい悪夢のように
今週のさそり座は、「子ども来て絵本くべたる焚火かな」(榮猿丸)という句のごとし。あるいは、異質な出会いをあえてこちらへ引き寄せていこうとするような星回り。
思わずドキッとする一句です。 けれど、それは私たちがどこかで「子ども」というのは純粋無垢であり、その存在自体が救いであるかのような、都合のいい“フィクション”に仕立ててしまっているからではないでしょうか。
夢も見ずに生きるのでは味気ないものですが、夢もまた見すぎると、その夢に復讐されるのだと言います。
今のさそり座の人たちが引き寄せようとしているのも、そうした自分が思ってもいなかったような“復讐”であり、これまで生きてきた現実に取って代わろうとしている“夢”なのかも知れません。
12日(木)にさそり座から数えて「小さな死」を意味する8番目のふたご座で満月を迎えていく今週は、そんなしがらみの解消劇と表裏の出会いや別れを経験していきやすいタイミングと言えるでしょう。
秘密と予感
何か大事なことを解りかける時というのは、人はすべからく孤独なのではないでしょうか。
つまり、安易な交わりで自分と他人をごっちゃにしてしまうことが間違ってもないような、冬の怜悧な空気のようなものを肌で感じている時に初めて、目に見えない真の交わりへと開いていくことができるのではないか。
この点について、心理学者のユングは最晩年に出版された『ユング自伝』において、次のように言及しています。
「われわれがなんらかの秘密を持ち、不可能な何ものかに対して予感を持つのは、大切なことである。それは、われわれの生活を、なにか非個人的な、霊的なものによって充たしてくれる。それを一度も経験したことのない人は、なにか大切なことを見逃している」
ユングからすると、生活の必要十分条件とは、どこかの時点で自分だけの秘密にならざるを得ないものであり、心地よく生きていくということは、恐らく何らかのかたちで「なにか非個人的な、霊的なもの」との折り合いを予感していくということだったのです。
おそらく、“夢”を自分の人生に引き入れようとするのも、そんな時なのでしょう。その意味で、今週はあなたの孤独が破れていくタイミングでもあるのだとも言えるかも知れません。
今週のキーワード
劇の中に挿入された劇