さそり座
「裏のみち」に立つ
眼のありどころ
今週のさそり座は、「冬が来てゐる杉山の裏のみち」(角田杜南)という句のごとし。あるいは、さりげなく心の拠り所をぐいと手元に引き寄せていくような星回り。
掲句は実際の句稿を読むと、「裏のみち」とも読めるし、「裏てみち」とも読めてしまうらしく、それによって大きく印象が違ってくる一句と言えるでしょう。
たった一字の違いで、何が違ってくるのか。それは作者の眼のありどころが違ってくるのです。
もし「裏手みち」ということであるならば、眼はぐるりと周辺一帯に置かれており、それを「手」という一字に一気に畳み込んでいる訳です。それが、「裏のみち」となると、今度は眼は足もとにきて、今度は何度も通ううちに、勝手知ったる家の敷地のような感覚でその裏道の変化を噛みしめている句となります。
27日(水)にさそり座から数えて「肚落ち」を意味する2番目のいて座で新月が起きていく今週のあなたは、ある意味で、こうした視点の変化と言いますか、眼のありどころを落ち着かせていくことそれ自体が大切なテーマとなっていきそうです。
魂の確認作業
私たちは本来誰しもがみな、自分の心のなかに人生の「裏のみち」を持っているものです。
土のしめった感触や、匂い。光や音や色のかそけきグラデーション。そういうものを一つひとつ感じながら、天地のあいだに立たされている自分を意識できたとき、目の前の木立のすき間から、自分の残りの人生で歩んでいく道の向かう先が見えてくるはず。
これが「表のみち」になってしまうと、誰かと挨拶をかわしたりして、普段の顔を作っていかなければならなくなる訳で、心を整えることは難しくなってきますし、自分の心に問うことの豊かさも実感しにくくなってしまうでしょう。
その意味で、自分に与えられた生命を慈しんでいくためには、私たちは自分自身の「裏のみち」の存在を知り、実際にそこに立って大地を踏みしめていかねばならないのだと思います。
そして今のあなたならば、そういうことも十分に当たりがついていくのではないでしょうか。
今週のキーワード
眼が落ち着けば心も整う