さそり座
新生順応
エミリーのように
今週のさそり座の星回りは、「墓の科学」のよう。あるいは、死と生の往還の相を実感していくこと。
内藤里永子さんが翻訳・編集したエミリー・ディッキンソン詩集は7部構成になっていて、その最後の章には「「希望」は背中に翼をつけている―癒しのことば」というタイトルが付けられているのですが、その中の「ひとたび救われた者は」という詩の中に「墓の科学」という言葉が出てきます。
「ひとたび救われた者は
自ら身につけた枝で
救う使命を帯びるのです
これは 墓の科学」
彼女の人生は「死」に彩られていました。理不尽かつ横暴な仕方で、つぎつぎと大切な人の命を奪い去られていく宿命にあり、みずからも正気を失うほどの苦悩を経ました。
ただ、そうした「死」の意識がつねに寄り添っていたことで、彼女は生の意味を深く探ることができたのだと思います。先の詩は次のように続きます。
「他の誰も知らない
わたしは知っている
自ら崩壊に耐えたのだから
資格を得てしまった敗北を初めて知り
敗北が死だと取り違える人々の
絶望を しだいに和らげて
新生に順応するよう導くのです」
特に最後の下りなどは、いよいよ太陽がさそり座へと移っていく今のあなたにぴったりの言葉なのではないかと思います。
壁は壊すのではなくすり抜けるもの
そうそう、「死」の意識ということを別角度から感じとるという意味では、『100歳の華麗なる冒険』という映画もまた、今週のあなたにぴったりの作品と言えるかも知れません。
100歳ともなれば頭も体もそんなに動かないし、大体の人より年上だし、身体的・社会的な制約や重圧がいろいろかかってきますが、この映画の主人公であるおじいちゃんは、それらをいともたやすく、しかも限りなく優雅に飛び越え、なんなくすり抜けていきます。
予告編を見るだけで、もし壁にぶつかったとしても、いちいち頭や体を叩きつけたり、「力」で壁を粉砕する必要などないのだということをきっと思い出すことができるはず。
彼はまさに、自らの死をいったん通り抜けることで「新生に順応」したのだと言えるでしょう。
今週のキーワード
敗北を死だと取り違える人々の絶望