さそり座
感じるままに作り出す
現象としての「妖怪」
今週のさそり座は、薄暗い沢に立ち現れてくる「小豆とぎ」のごとし。あるいは、触覚性感覚の立ち上がりを感じていくような星回り。
夜、川や谷で「シャリシャリシャリ」という、あずきを洗うような音がする。それは小豆とぎという妖怪が音を出しているのだ。そんな伝承が、かつては日本各地に残っていたそうです。
今どき妖怪なんて言えば、無知や妄信のレッテルを真っ先に貼られてしまいそうですが、しかし水木しげるや彼のよき理解者たちが口々に言っているように、そもそも妖怪というのは近代的知性によって「解明」され「克服」されるべき対象などではなく、ただ「感じる」ものなのです。
例えば先の小豆とぎにしても、濃い闇の感覚、水の流れる音や虫の声とは別に聞こえてくるかすかな物音、確かにそこに何か動いているものがいる気配、といった否定しようがない身体体験への感じ取りが前景化していった時に、ひとつの現象として仮の名称を与えられたものだと考えれば合点がいくのではないでしょうか。
19日(日)にさそり座で満月が起こっていく今週は、あなたにとって、目に見えない音や気、不可解な「感じ」としか言いようがないものが、像を結んでひとつの疑いようのないリアリティーを作り出していくはずです。
闇で蠢くものの昇華
水木しげるとはまた一味違った天才に、『エイリアン』をデザインしたH・R・ギーガーがいます。彼もまた、独特の世界観を有するカルトスターとなりましたが、創作の秘密について「自分の夢に出てきたものを描いている」と述べていました。
それが事実であれ、ある種の演出であれ、いずれにせよ彼が積極的な隠遁生活の中で次々と作品を生み出していったことは確かです。
また実際にギーガーの絵を見た人の多くは、おそらくそこに強い性衝動の抑圧を感じる事と思いますが、彼は実際10代の頃に初めてキスをしたことで、しばらくの間絶え間ない性的興奮に襲われ、起きている間中頭の中をエロティシズムが占めていた時期があったと語っています。その体験が創作に与えた影響も大きかったようです。
彼ほどではないにせよ、今週のあなたもまた、積極的に感じとられた「感じ」と孤独の中で寄り添い向き合っていく時間ことで、自分の中で研ぎ澄まされ、育まれていくものの疑いようのない存在を再認識していくことでしょう。
今週のキーワード
甘美なる孤独