さそり座
さすらいゆく旅人のように
「舟こぎ渡る月人をのこ」
今週のさそり座は、だんだん地球から離れていく月のごとし。あるいは、足に生えた根に鎌をいれて、あてどない旅に出ていくような星回り。
地球上の生命がいったいどのくらい月のお世話になっているか。あまりに当たり前になり過ぎてしまってはいますが、生命のリズムを司るという意味で、生殖と誕生と、それから死などはみな月の管理に拠っている訳です。
で、そんな月というのは、実はだんだん地球の自転が遅くなるにしたがって地球から遠のいており、現在は1年に3cmずつ離れていて、そうそうすぐにはなくならないとしても、SF的未来においては月はいなくなるんです。
その点を知ってか知らずか、月はとにかく子孫を残しまくろうとする。ただし、月は決してみずからは懐妊しません。
人間だとか、地上の生物だとかの生殖本能を呼び覚ます形で、月の記憶を伝えようとしていく。そういう意味で、月が地上に種をまいて消えてしまうのなら、地上の生命というのは母子家庭育ちなのだと言えるかもしれません。
「秋風の清き夕べに天の川舟こぎ渡る月人壮子(つきひとをのこ)」
と万葉集でも歌われているように、日本でも古来より月は月の船を漕ぐ男子として思い描かれてきました。
そして今週の、また2019年のさそり座のあなたもまた、そんな月のようにもっと重力から自由になっていくことを自らに許可していくことがテーマとなっていくでしょう。
流れゆく水の動き
すべてのものは流れ、なにものも留まらず、
「同じ川に入っていく者には次から次へと新しい水が流れてくる」(ヘラクレイトス)
これからのさそり座の人たちには、どこかでそんな風な漂泊する旅人の風情が醸し出されていきそうです。
それはものごとをコンクリートで固め、現実のたえず揺れ動いて捉えどころのない側面に蓋をして封じてしまうような現代人のライフスタイルへの違和感が、どこからかふっと湧いてくるからなのかもしれません。
現実の奥底に流れる「水の動き」に同調し、自分の命を担保にして風景と向かい合う。 「舟」の底から感じられる自然や死のなまなましい音に耳をかたむけながら、ときに言葉を紡ぎながら、櫂を使って舟を進めていく。
そんな漂泊の旅人の精神に、自然と吸い寄せられていくでしょう。
今週のキーワード
生々流転