さそり座
やさしく穴を照らす
心の穴に向き合う
今週のさそり座は、「人 穴を 掘れば 寒月 穴の上」(富澤赤黄男)という句のごとし。あるいは、頭を隠して穴を隠さず。
人は誰しも心に「穴」を持っています。
それは生きているとどうしても出てきてしまう「生きづらさ」や「寂しさ」、コンプレックスや劣等感、嫉妬や罪悪感といった、自分ではコントロールできない感情や考えが湧いてきてしまう場所でもありますし、そういうものをそっとしまっておける押入れのようなものとも言えるかもしれません。
いずれにせよ、ぽっかりと開いた穴を前にすると、私たちはどうしてもそれを埋めたくなったり、なかったことにして塞いでしまいたくなる訳ですが、今週のあなたはそんな心の穴のかたちを観察しつつ、静かに寄り添っていけるかどうかが問われていくでしょう。
その際、覚えておかなければならないのは、こうした心の穴というのは、誰か人の手を借りることで完璧に埋まるということは決してあり得ないのだということ。
恋愛しかり、友情しかり、家族の向けてくれる愛情だって、それは難しいのです。
ちょうど月の光が照らすくらいのささやかさで、まずは自分の穴の底へと降りてみましょう。
月光に視線を重ねる
自分の存在を引き上げてくれる存在や、心の隙間を埋めてくれる相手をいくら外部や環境に探してみても、あなたが本当に求めているものは得られないということは、今のあなたならばもう十分過ぎるほど分かっているのではないでしょうか。
ホモ・サピエンスがスピリットをもって出てきた最大の理由のひとつに、「月があった」ということが考えられますが、実際、満ちては欠ける月への認識は、死の観念を生み出し、それはそのまま哲学の起源や宗教心の大元になっていきました。
つまり、ホモ・サピエンスは月をみることで、ちっぽけな自分たちの存在を自己受容し、それによってますます「自分は何者なのか」という自覚を深めていった訳ですが、今週のあなたのテーマもまたその一点にあるのだと言えます。
欠点なんて直さなくていい、ただ見つめていくことで、その視線は次第に月に似ていくでしょう。
今週のキーワード
月光菩薩